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導入事例/コラム

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ボルトを締めても止まらない!? シートガスケット特有の「浸透漏れ」のメカニズムと対策 【技術解説】  株式会社ダイコー

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ボルトを締めても止まらない!? シートガスケット特有の「浸透漏れ」のメカニズムと対策 【技術解説】

「フランジの隙間から漏れているわけではないのに、石鹸水をかけるとガスケットの断面から泡が出る」
「規定トルクで締めているのに、気密試験で圧力が微妙に下がる」

配管の現場で、このような不可解な微少漏れに悩まされたことはありませんか?
それは、ガスケットとフランジの隙間から漏れる「界面漏れ」ではなく、ガスケットの素材そのものを通過して漏れ出す「浸透漏れ(Permeation Leakage)」かもしれません。

特に、ジョイントシートなどの「シートガスケット」を使用する場合、この浸透漏れのリスクは常に存在します。そして、この対策において最も効果的なのが、「ガスケットを薄くすること」なのです。

この記事では、見落とされがちな「浸透漏れ」のメカニズムと、なぜ厚いガスケットが漏れを招くのか、その物理的な理由解説します。

1. 漏れには「2種類」ある

ガスケットの漏れ対策を考える際、まず漏れのルートが2つあることを理解する必要があります。

① 接面漏れ(Interface Leakage)

  • ルート: ガスケットとフランジ面の「接触面(隙間)」を通る漏れ。
  • 原因: フランジの傷、歪み、締付力不足による密着不良。
  • 対策: 表面を馴染ませる、強く締める。

② 浸透漏れ(Permeation Leakage)

  • ルート: ガスケットの「内部(素材の中)」を通って、内径側から外径側へ抜け出る漏れ。
  • 原因: シートガスケットの多孔質構造(繊維の隙間)を流体が通り抜ける。
  • 対策: 内部組織を押し潰す、「断面積」を減らす(薄くする)。

ジョイントシートは、繊維材料とゴムバインダーを圧縮して作られています。微視的に見れば、中には無数の微細な隙間(空隙)があり、ガス(気体)などの分子が小さい流体は、この迷路のような隙間を通って外に出てきてしまいます。これが浸透漏れの正体です。

2. なぜ「厚いガスケット」は浸透漏れしやすいのか?

「漏れが怖いから、厚めの3.0mmを使っておこう」。この判断が、浸透漏れに関しては逆効果になります。その理由は物理的に説明できます。

理由①:漏れの「通り道」が広くなるから

浸透漏れの量は、流体が通過する「断面積」に比例します。
ガスケットの厚さを 1.5mm から 3.0mm に倍増させるということは、流体が通り抜けるトンネルの面積を2倍に広げているのと同じことです。

  • 薄いガスケット: トンネルが狭い = 漏れにくい
  • 厚いガスケット: トンネルが広い = 漏れやすい

理由②:内部の隙間を「潰しきれない」から

浸透漏れを防ぐには、強い力で締め付けて、シート内部の繊維の隙間をギュッと押し潰し、緻密にする必要があります。
しかし、厚いガスケットはクッション性が高いため、表面は潰れても、中心部の隙間までは力が伝わりにくい(潰しきれない)傾向があります。一方、薄いガスケットは全体を均一に押し潰しやすく、内部組織を緻密にして浸透を防ぐことができます 。

3. ガス系ラインの選定基準

流体ごとの推奨厚さが以下のように明確に区別されています。

  • 水・油系: 口径によっては3.0mmも使用可。
    液体は分子が大きく粘度もあるため、浸透漏れしにくいためです。
  • ガス系(気体): 全サイズ 1.5mm以下 。
    気体(空気、窒素、ガス冷媒など)は分子が小さく、容易に浸透漏れを起こします。そのため、どんなに大口径であっても、浸透漏れのリスクが高い「厚物」は推奨されず、出来るだけ薄物が推奨されます。

4. 現場でできる「浸透漏れ」対策

もし、ガス配管や真空ラインで微少漏れが止まらない場合、以下の視点で点検・対策を行ってください。

対策①:厚さを「1.5mm」に変更する

現在3.0mmを使用しているなら、1.5mmに変更するだけで、浸透漏れのリスク(断面積)は半減します。また、薄くすることで「応力緩和」も減るため、増し締め効果も高まります 。

対策②:ペースト(液体パッキン)の併用

どうしてもフランジが荒れていて厚いガスケットを使わざるを得ない場合は、ガスケットの断面(内径・外径)や表面に、シール剤(ガスケットペースト)を薄く塗布します。ペーストが微細な空隙に入り込み、浸透漏れをブロックします。

対策③:高機能シートへの変更

一般的なジョイントシートよりも、内部構造が緻密な「膨張黒鉛シート」や「高機能フッ素樹脂シート」を選定することで、素材レベルで浸透漏れを減らすことができます。

最終章:答えはここにある。「選定のご依頼はダイコーへ」

「浸透漏れ」という見えない敵と戦うためには、適切な素材と、何より**「適切な厚さ」**の選定が不可欠です。

「ガス配管だから1.0mmで加工したいが、手切りでは難しい」
「3.0mmから1.5mmに変えたいが、フランジの歪みが心配だ」

そのようなお悩みこそ、株式会社ダイコーにご相談ください。
ダイコーでは、流体の種類(ガスか液体か)や圧力条件をヒアリングし、浸透漏れリスクを最小限に抑える最適な厚さ(1.0mm, 1.5mm)を選定・提案します。

薄いガスケットは加工が難しい場合がありますが、弊社ではカッティングプロッターやトムソン加工を駆使し、歪みのない精密な製品を1枚から即納体制で製造します。
「ボルトを締めても泡が出る」
その現象、ガスケットを薄くすれば止まるかもしれません。選定・加工のご依頼はダイコーへ — どうぞ、お気軽にお問い合わせください。

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