絶縁ライニングボルト徹底ガイド|取り付け時の「ガスケット干渉」を解決!施工性と電食防止を両立する絶縁ボルト
「ステンレス配管と鉄製フランジを接続したら、ボルト周りが異常に錆びてしまった」
「地下埋設配管で、原因不明の腐食による漏洩が頻発している」
「長期的に安心して使える、信頼性の高い絶縁対策を行いたい」…。
プラントやビルの配管設備において、「腐食」は設備の寿命を縮め、重大な事故につながる最大のリスク要因です。中でも、異なる金属同士を接続した際に発生する「電食(異種金属接触腐食)」は、進行が早く、対策が不可欠な現象です。
この電食を防ぐための標準的な手法が「絶縁キット(絶縁ボルト・ガスケット)」の使用ですが、その中でも特に施工性と信頼性に優れ、現場での取り付けトラブル(ガスケットへの干渉など)を解消できるのが、ボルト軸部をフッ素樹脂でコーティングした「絶縁ライニングボルト」です。
この記事では、そもそもなぜ「電食」が起きるのかというメカニズムの解説から、絶縁ライニングボルトがなぜ現場で支持されるのか、その構造的メリットとスペック、そして現場の規格に合わせた最適な選定方法までを徹底的に解説します。
第1部:なぜ配管は錆びるのか?— 恐怖の「電食」メカニズム
絶縁ボルトの必要性を理解するために、まずは敵である「電食(ガルバニック腐食)」の正体を知る必要があります。
1-1. 金属が「電池」になってしまう現象
電食とは、簡単に言えば「配管接続部が巨大な電池になってしまい、電気が流れることで金属が溶け出す現象」です。これには3つの条件が必要です。
- 異種金属の接触: イオン化傾向(電気的な特性)が異なる2種類の金属がつながっていること。(例:ステンレス配管 + 炭素鋼フランジ)
- 電解質(水)の存在: 内部流体や、雨水、結露などが介在すること。
- 電気的導通: ボルトやナットを通じて、金属同士が電気的に繋がっていること。
この条件が揃うと、イオン化傾向の大きい(卑な)金属が「マイナス極(アノード)」となり、イオン化傾向の小さい(貴な)金属が「プラス極(カソード)」となります。そして、アノード側の金属から電子が放出され、金属そのものがイオンとなって水中に溶け出します。 これが「腐食」です。
1-2. 電食を防ぐ唯一の方法「絶縁」
一度電食が始まると、塗装などで表面を覆っても内部で腐食が進行するため、止めることは困難です。
最も確実な対策は、上記の3条件のうち「3. 電気的導通」を断ち切ること、すなわち「絶縁」です。
フランジ間に絶縁ガスケットを挟み、さらにボルト・ナットとフランジが接触しないように「絶縁ボルト」を使用することで、電気の回路を遮断し、腐食を根本から防ぐことができます。
第2部:絶縁ライニングボルトとは?— PVdF一体成型による「確実な絶縁」
絶縁ライニングボルトは、ボルトの軸部(ネジを切っていない部分)に、絶縁性・耐食性に優れたPVdF(ポリフッ化ビニリデン)樹脂を、強固に被覆(ライニング)した製品です。
2-1. 構造の特徴:ボルトと絶縁層の「完全一体化」
この製品の最大の特徴は、ボルトの金属母材と絶縁樹脂層が完全に一体化している点です。
独自の成型技術により、ボルト表面にPVdF樹脂を均一かつ強固に密着させています。これにより、輸送中や施工中の衝撃で絶縁層が剥がれたり、ズレたりすることがありません。
2-2. 現場が喜ぶ「ガスケットに干渉しない」施工性
絶縁ライニングボルトは、絶縁被覆部の外径が、ネジ部の有効径とほぼ同じになるように設計されています。
これにより、以下の大きなメリットが生まれます。
- ガスケット干渉なし: 絶縁部が太くないため、フランジ間に挟み込む「絶縁ガスケット」の内径と接触(干渉)しません。これにより、ガスケットを所定の位置に正確にセットしやすく、無理に押し込んでガスケットを傷つけるといった施工ミスを防ぎます。
- スムーズな挿入: ボルト全体がスリムな形状を保っているため、フランジのボルト穴に対して余裕があり、通常のボルトと同じ感覚でスムーズに挿入できます。フランジの穴位置に多少のズレ(芯ズレ)があっても、無理なく通すことが可能です。
- 作業時間の短縮: 特殊な工具や手順を必要とせず、誰でも迅速に施工できるため、大規模なプラント建設や定期修理(SDM)における工期短縮に貢献します。
第3部:性能と仕様 — 過酷な環境に耐えるスペック
絶縁ライニングボルトは、単に電気を通さないだけでなく、プラントの過酷な環境に耐えうる高いスペックを備えています。
3-1. 優れた絶縁・耐電圧性能
被覆材であるPVdF(ポリフッ化ビニリデン)は、フッ素樹脂の中でも特に機械的強度と絶縁性に優れた素材です。
- 絶縁破壊強さ: 10kV/mm以上
- 体積固有抵抗: 0.5 × 10¹⁴ Ω・cm
この高い絶縁性能により、微弱なガルバニック電流はもちろん、迷走電流や静電気によるスパークリスクも確実にシャットアウトします。
3-2. 幅広い使用温度範囲と耐候性
極低温のLNG(液化天然ガス)ラインから、100℃を超える高温流体ラインまで、幅広い温度領域で使用可能です。寒冷地や熱帯地域などの環境温度変化にも耐え抜きます。
- 耐候性・耐食性: フッ素樹脂特有の極めて高い耐薬品性と耐候性を持ちます。酸性雨、塩害、紫外線にさらされる屋外環境や、化学薬品雰囲気の中でも、絶縁層が劣化・分解することなく、長期にわたり性能を維持します。
3-3. 用途に合わせた「材質」の選択肢
ボルトの母材(芯材)は、配管の流体圧力や環境条件に応じて最適な金属材料を選択できます。
- SS400(炭素鋼): 一般的な水配管や空調配管などに。
- SNB7(合金鋼): 高温・高圧配管用として標準的に使用される高強度材。
- SUS304 / SUS316(ステンレス鋼): 特に腐食しやすい環境や、クリーンな環境に。
最終章:答えはここにある。「選定のご依頼はダイコーへ」
絶縁ライニングボルトは、電食対策の切り札ですが、その導入には「規格」と「寸法」の正確な選定が不可欠です。
「JIS 10K 100Aのフランジに合う、絶縁ボルトの長さは?」
「ANSI規格(150LB)の海外製装置と接続したいが、対応するボルトはあるか?」
「高温蒸気ラインなので、ボルト材質をSNB7に指定して作りたい」
このような、カタログのスペック表だけでは判断が難しい、現場ごとの細かな仕様決定。それに対して、50年以上の経験に裏打ちされた専門知識(ノウハウ)と、それを形にする加工技術(ソリューション)の両輪で応えることこそ、工業用製品の加工メーカーである株式会社ダイコーの真価です。
専門家による最適な「選定・キット化」
「選定のご依頼はダイコーへ」とお任せください。
ダイコーでは、お客様のフランジ規格(JIS 5K, 10K, 16K, 20K / ANSI 150LB, 300LB / JPIなど)に合わせて、最適なボルト径・長さを選定します。
さらに、絶縁ボルトだけでなく、相手となる「絶縁ガスケット(フランジパッキン)」や、ナット座面を絶縁するための「絶縁ワッシャー(FRP製など)」を組み合わせた、「絶縁フランジキット」として一式でのご提案・納入が可能です。
特殊寸法・材質への対応力
ライニングタイプだけではなく、PTFEスリーブタイプやTOMBO™ No.9019-Zなど用途に合わせたご提案が可能です。
「電食」という見えない敵から設備を守るために。
材質の選定に迷ったとき、規格にないサイズのボルトが必要なとき。その答えは、常にここにあります。選定のご依頼はダイコーへ — どうぞ、お気軽にご相談ください。
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