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耐油ゴム比較!NBR、FKM(バイトン)、シリコーンはどれが最適?環境別の選び方 株式会社ダイコー

耐油ゴム比較!NBR、FKM(バイトン)、シリコーンはどれが最適?環境別の選び方
工場の油圧機器や配管設備、各種産業機械において、「油漏れ(オイルシール不良)」は重大な設備トラブルや火災、ライン停止を引き起こす致命的な問題です。その漏れに対し、密封の要となるのが、「耐油ゴム」を用いたガスケットやパッキンなどのシール部品です。
本記事では、工業用シール材の専門商社・加工メーカーである株式会社ダイコーが、ゴムが油で劣化するメカニズムから、代表的な耐油ゴム(NBR・FKM・シリコーンなど)の特性比較、環境別の正しい選び方までを徹底解説します。
現場の「膨潤」や「硬化」といったトラブル対策も含め、設計者や保全担当者様が現場ですぐに使える実践的な内容をまとめました。
1. 【定義】ゴムの「耐油性」とは?膨潤と硬化の違い
ガスケットやパッキンにおける「耐油性」とは、流体である油(鉱物油、動植物油、合成油など)に触れても、ゴム本来の物性(弾力、強度、体積)が変化しにくく、シール機能を維持できる性質のことです。
耐油性の低いゴムを油のラインに使用すると、大きく分けて以下の2種類の劣化現象が発生します。
膨潤(ぼうじゅん):
ゴムが油を吸収してしまい、体積が大きく膨張する現象です。パッキンが溝からはみ出したり、強度が著しく低下してちぎれたりする原因になります。
硬化(こうか)・収縮:
ゴムの中に含まれる可塑剤(柔らかくするための成分)が油によって抽出されてしまい、ゴムがカチカチに硬化したり、縮んで隙間ができたりする現象です。
2. なぜ油で劣化するのか?「化学的相性」の仕組みと「温度」
ゴムが油に耐えられるかどうかは、ゴムと油の「化学的な相性」によって決まります。これを理解することが、適切な材質選びの第一歩となります。
化学的相性(SP値による影響):
ゴムと油にはそれぞれ「SP値(溶解度パラメーター)」という数値があります。この数値が近いもの同士は互いに溶け込みやすく(=ゴムが油を吸収して膨潤しやすい)という性質を持ちます。そのため、シール材を選定する際は、対象となる油の成分に反発する(SP値が離れている)ゴム材質を選ぶ必要があります。
※プロのポイント:
「耐油性がある」と一言で言っても、エンジンオイル(鉱物油)には強くても、ブレーキフルード(合成油)には溶けてしまうなど、油の種類によって耐性は全く異なります。
温度による劣化の加速:
油の温度が高くなればなるほど、化学反応は活発になり、ゴムへの攻撃性(膨潤や硬化のスピード)は大きく増加します。常温の油であれば耐えられるゴムでも、高温の油環境では全く使い物にならないケースが多いため、実用上は「油の種類」と「最高使用温度」のセットで選定を行う必要があります。
3. 【材質比較表】耐油ゴムの選び方と耐性一覧
耐油ゴムの寿命は「油の種類」と「温度」に適合した材質を選定できるかどうかにかかっています。現場で多用される代表的なゴム材質の耐油特性を比較表にまとめました。
| 材質名 (略号) |
一般的な名称 | 耐熱温度の目安 | 鉱物油 (機械油)への耐性 |
動植物油 への耐性 |
特徴と主な用途・適した環境 |
|---|---|---|---|---|---|
| NBR | ニトリルゴム | -25℃ ~ 100℃ | ◎ 非常に優れる | ○ 優れる | 【耐油ゴムの標準】 最も一般的で安価。油圧機器、潤滑油、燃料配管など、油環境の多くをカバー。 |
| FKM | フッ素ゴム | -15℃ ~ 200℃ | ◎ 極めて優れる | ◎ 極めて優れる | 【最強の高機能ゴム】 優れた耐熱性と耐油・耐薬品性を併せ持つ。高温の油や特殊溶剤ラインに使用。(※バイトン等) |
| VMQ | シリコーンゴム | -50℃ ~ 200℃ | × 不可(膨潤) | △ 条件による | 【要注意】 耐寒性と耐熱性を併せ持つが、鉱物油には極めて弱い。無毒性が求められる食品関連などで限定的に使用。 |
| CR | クロロプレンゴム | -20℃ ~ 100℃ | △ 条件による | ○ 良好 | 【バランス・耐候性】 耐候性や難燃性を持ち屋外で使用。重度の油環境には不向きだが、油の飛沫がかかる程度なら使用可能。 |
| EPDM | EPDM (エチレンプロピレンゴム) |
-40℃ ~ 150℃ | × 絶対不可 | △ 条件による | 【耐水・耐候特化】 水回りや屋外では最強だが、鉱物油に触れると激しく膨潤するため油ラインは厳禁。 |
※選定の際は、対象となる油の正確な成分や添加剤との化学的な相性を、必ずメーカーの耐油適合表で確認してください。
4. 環境に基づく耐油ガスケットのカテゴリと選び方
配管や機器の設計において、どのような油環境にどの材質を当てはめるべきか、代表的なカテゴリに分類しました。
一般作動油・潤滑油ライン(常温~100℃未満):
最も標準的な耐油性が求められる環境です。コストパフォーマンスに優れる「NBR(ニトリルゴム)」をご検討ください。機械周りのパッキンの大半を占めます。
高温エンジンオイル・特殊合成油ライン(100℃~200℃):
NBRの耐熱限界を超える高温の油や、攻撃性の強い添加剤が含まれた油の環境です。耐熱・耐油性に最高レベルの性能を持つ「FKM(フッ素ゴム)」が必須となります。
屋外の油圧設備周辺(紫外線暴露+油飛沫):
NBRは紫外線(オゾン)に弱くひび割れやすいため、屋外で油の飛沫もかかるような環境では、耐候性と耐油性を併せ持つブレンド材や、「CR(クロロプレンゴム)」「FKM」などが適しています。
食品機械の食用油ライン:
動植物油に対しては多くのゴムが耐性を持ちますが、食品衛生法に適合した無毒性が求められます。食品用グレードの「NBR」や「シリコーンゴム(VMQ)」が採用されます。(※シリコーンは鉱物油には不可ですが、動植物油には条件次第で使用可能です)
5. 現場で起きる耐油ゴムの4大トラブル事例と対策
油環境のシール材から漏れが発生した場合、単に新しいものへ交換するだけでは再発を招きます。パッキンの損傷状態から原因を特定し、根本的な対策を打つことが保全の鉄則です。現場で頻発する4つのトラブルとその解決策を解説します。
トラブル①:膨潤(大きく膨らむ)
原因: 使用している油に対してゴムの耐油性が不足しており、油を吸収してしまった状態です。特に、EPDMやシリコーンゴムを鉱物油ラインに誤用した際に激しく発生します。
対策: 油の成分を確認し、NBRやFKMなど耐油性に優れた材質へ変更する。
トラブル②:抽出による硬化・収縮(カチカチに縮む)
原因: ゴム内部の配合剤(可塑剤など)が油の中に溶け出してしまい、ゴムが本来の体積と弾力を失った状態です。
対策: 油の抽出作用に強い、より安定した高分子構造を持つ材質(FKMなど)へアップグレードする。
トラブル③:熱劣化による硬化・ひび割れ(クラック)
原因: 油の温度がゴムの耐熱限界を超えているため、熱老化を起こして弾性を失い、割れてしまった状態です。
対策: NBR(耐熱100℃)を使用している場合は、高温油に耐えられるFKM(耐熱200℃)へ材質を変更する。
トラブル④:圧力によるはみ出し・破断
原因: 膨潤によってゴムが柔らかく(強度が低下)なった状態で高い油圧がかかり、フランジや溝の隙間からゴムが押し出されてちぎれた状態です。
対策: 膨潤しない材質(FKMなど)へ変更するか、純ゴムではなく耐油バインダーを用いた「ジョイントシート」などの高強度なシール材に変更する。
6. 選定・設計時の3つの重要ポイント
耐油パッキンを新たに選定・組み込む際、以下の3点に注意して設計や施工を行ってください。
- 「熱に強い=油に強い」の誤解をなくす:
シリコーンゴム(VMQ)やEPDMは、熱や水には非常に強いですが、機械油(鉱物油)には全く耐性がありません。熱と油の両方がかかる環境では、必ずFKMを選択してください。 - 添加剤の影響を考慮する:
基本の油(ベースオイル)が鉱物油であっても、極圧添加剤や防錆剤などの特殊な成分が含まれていると、NBRでも劣化する場合があります。不明な場合は事前に浸漬テストを行うことを推奨します。 - 高圧環境下での材質変更:
高圧の油圧フランジ等では、純ゴム板では圧着力で横逃げしてしまいます。その場合は、ゴムの柔軟性と繊維の強度を併せ持つ「ノンアスベストジョイントシート(耐油グレード)」の採用を検討してください。
7. 耐油ゴム・特殊シール材の手配なら「株式会社ダイコー」へ
株式会社ダイコーでは、創業から50年にわたり培ってきた工業用シール材の専門知識と、圧倒的な在庫ネットワークを活かし、お客様の現場環境に最適な耐油パッキンをスピーディーにお届けします。
【よくあるご相談例】
- 「図面通りの耐油パッキン(NBRやFKM)を大至急手配したい」
- 「今のパッキンが膨潤してすぐ漏れるので、最適な材質を提案してほしい」
- 「特殊な異形形状で、数千個単位の量産も一括で頼みたい」
試作(型レス)から自社抜き型での大量生産までシームレスに対応
標準的なJIS規格パッキンの即納対応はもちろん、既存の規格では対応できない特殊な形状の箇所には、以下のハイブリッドな加工体制で対応いたします。
- 試作・特急対応:
最新のカッティングプロッターやウォータージェット加工機を用い、NBRやFKMの原板から「抜き型不要(型レス)」で削り出し、即日製作・ご提案します。 - 大量生産(数物)対応:
試作で仕様が確定した後など、数千〜数万個規模の「数物(量産)」のご注文にも強力に対応可能です。当社では専用の「抜き型(トムソン型など)」を自社内で作成する体制を完備しているため、外注にかかるタイムロスやコストを極限まで削減し、圧倒的な短納期・低コストでの量産供給を実現します。
油漏れトラブルの解決やシール材の選定・加工でお困りの際は、2026年1月にISO9001認証を取得している株式会社ダイコーへ、ぜひお気軽にご相談ください。
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