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導入事例/コラム

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PTFEガスケット選定ガイド|「100℃の壁」とクリープの真実、そして高温域を制覇するアイテムとは 株式会社ダイコー

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PTFEガスケット選定ガイド|「100℃の壁」とクリープの真実、そして高温域を制覇するアイテムとは

「強酸ラインで使えるガスケットは、テフロン®(PTFE)しかない」「食品・医薬品プロセスで、汚染のないクリーンなシール材が必要だ」…。

化学プラントから半導体、食品、医薬品製造に至るまで、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)は、その「プラスチックの王様」とも称される圧倒的な耐薬品性と非汚染性により、他のいかなる素材も代替不可能な、絶対的な地位を確立しています。

しかし、この万能に見えるPTFEガスケットには、現場の技術者を長年悩ませてきた、一つの致命的な弱点が存在します。それが、「クリープ(応力緩和)」です。特に温度が上昇するとこの現象は顕著になり、「PTFEガスケットは100℃まで」という、ある種の“常識”を生み出してきました 。

この記事では、PTFEが持つ素晴らしい特性と、その最大の弱点である「クリープ」のメカニズムを解説します。そして、その「100℃の壁」を打ち破るための「充填材入りPTFE」について、その選定の難しさと、より詳細な解決策を提示する【PTFEガスケット選定 完全ガイド】(無料PDF)をご案内します。

第1部:PTFE(テフロン®)とは?— なぜ「プラスチックの王様」と呼ばれるのか

PTFEは、フッ素樹脂の一種で、その独特な分子構造により、他のプラスチックとは一線を画す驚異的な特性を持っています 。炭素(C)原子の骨格を、結合エネルギーが非常に強いフッ素(F)原子が隙間なく覆っている、非常に安定した分子構造が、以下のような卓越したメリットを生み出します。

PTFEの卓越した特性

  • 圧倒的な耐薬品性: ほぼ全ての酸、アルカリ、有機溶剤といった化学薬品に侵されることがありません 。
  • 優れた非汚染性(クリーン性): 化学的に極めて不活性で、ガスケットの成分が流体へ溶け出す(溶出する)ことがありません。医薬品や食品製造プロセスに最適です 。
  • 高い耐熱性: 材料としての連続使用温度は260℃と、プラスチックの中でも最高クラスの耐熱性を誇ります 。
  • 非粘着性・低摩擦性: 物質が付着しにくく(非粘着性)、摩擦係数が非常に低いため滑りやすいのも特徴です 。

これらの特性から、PTFEは、特に腐食性流体を扱うラインや、汚染を嫌うクリーンなラインにおいて、唯一無二のシール材として採用されてきました 。

第2部:PTFE最大の弱点「クリープ」と「100℃の壁」の正体

これほど優れた特性を持つPTFEが、なぜ「100℃まで」という不名誉な制限を課せられてきたのでしょうか。その犯人こそが、プラスチック特有の現象である「クリープ(応力緩和)」です。

クリープ(応力緩和)が漏れを引き起こすメカニズム

ガスケットのシール性能は、ボルトで締め付けられたガスケットが元に戻ろうとする力(反発力=応力)によって維持されています。

  • クリープ(応力緩和)とは: PTFEは、荷重がかかり続けると分子が滑って徐々に変形し、この反発力(応力)が時間とともに低下していく現象(応力緩和)が他の樹脂より大きい、という致命的な弱点を持っています 。
  • 「100℃の壁」の正体: このクリープ現象は、温度が上昇すると飛躍的に加速します 。ニチアスの資料でも、純粋なPTFEの使用温度は100℃で制限されています 。これは、100℃を超えるとクリープによる応力緩和が急激に進み、ボルトの緩みやシール面圧の低下を招き、漏洩に至るリスクが極めて高くなるためです。

第3部:100℃の壁を破る「充填材入りPTFE」という選択肢

PTFEの卓越した耐薬品性はそのままに、最大の弱点であるクリープ特性を克服したい…。この難題を解決するために開発されたのが「充填材(フィラー)入りPTFEガスケット」です。

これは、PTFEの樹脂に、シリカ、カーボン、ガラスファイバーといった無機質の充填材を混ぜ込むことで、高温下での変形(クリープ)を劇的に抑制する技術です 。

充填材入りPTFEガスケットの代表例

  • ニチアス TOMBO™ No. 9007-LC: シリカを充填し、耐クリープ性を大幅に改善。最高200℃まで使用可能になります 。
  • ニチアス TOMBO™ No. 1133: アルミナを充填し、最高300℃に対応。クリーン性にも優れます 。
  • ニチアス TOMBO™ No. 1155: シリカと黒鉛を配合し、最高300℃というPTFE系ガスケットで最高の耐熱性を実現しています 。

【最重要】選定のジレンマ:充填材の「弱点」

充填材はPTFEの耐熱性・耐クリープ性を劇的に向上させますが、同時にPTFE本来の完璧な耐薬品性を一部犠牲にするというトレードオフ(デメリット)を伴います 。

  • 例:シリカ充填(No. 9007-LCなど)
    シリカ(ガラスの主成分)は、フッ酸や強アルカリによって侵されます。そのため、これらの流体には使用できません 。

したがって、「100℃を超えるから、とりあえず充填材入りを使おう」という短絡的な選定は非常に危険です。「使用温度」と「流体の化学的性質」を天秤にかけ、どの充填材が最適(あるいは使用不可)なのかを、専門家と共に慎重に判断する必要があります。

最終章:答えはここにある。「複雑な選定・加工はダイコーへ」

PTFEガスケットの選定は、「純粋なPTFE(No.9007)の100℃の壁」と、「充填材入りPTFE(No.9007-LCなど)の耐薬品性の制約」という、二律背反の課題を解くパズルです。

「流体は強アルカリだが、温度は120℃だ。純粋PTFEではクリープが心配だが、シリカ入りは使えない…」
「食品ラインで200℃の蒸気を使う。クリーン性は必須だが、充填材入りで食品衛生法に適合するものはあるか?」
「図面通りに、特殊な形状の充填材入りPTFEガスケットを1枚だけ、精密に加工してほしい」

このような、カタログのスペック表だけでは決して答えの出ない、現場固有の課題。それに対して、50年以上の経験に裏打ちされた専門知識(ノウハウ)と、それを形にする加工技術(ソリューション)の両輪で応えることこそ、工業用製品の加工メーカーである株式会社ダイコーの真価です。


ダイコーでは、お客様の使用条件を専門の技術スタッフが詳細にヒアリング。純粋PTFE、各種充填材入りPTFE、さらにはゴア®ハイパーシート®のような特殊ePTFEまで、膨大な選択肢の中から、お客様の課題を解決する唯一無二の最適なガスケットを選定し、ご提案します。

また、ダイコーが保有する国内最大級のウォータージェット加工機やプロッターは、硬い充填材入りPTFEシートであっても、熱影響を与えることなく、お客様の図面通りに1個からでも迅速かつ精密に加工します。

材質の選定に迷ったとき、特殊な加工が必要なとき、あるいはどこに頼めば良いか分からない課題に直面したとき。その答えは、常にここにあります。複雑な選定・加工はダイコーへ — まずは、より詳細な選定ノウハウをまとめた以下のガイドブック(無料)をご覧ください。

▼ PTFEガスケット選定の基礎ガイド(PDF) ▼

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