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導入事例/コラム

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バルカー No.6590シリーズ|高温・高圧・極低温を制する究極のシール材「ブラックタイト」徹底解説 株式会社ダイコー

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バルカー No.6590シリーズ|高温・高圧・極低温を制する究極のシール材「ブラックタイト」徹底解説

「高温高圧の蒸気ラインで、絶対に漏洩が許されない」「LNGプラントの極低温配管で、熱サイクルに耐えうる信頼性の高いガスケットが必要だ」「石油化学プラントの重要機器で、長期にわたり安定したシール性能を維持したい」…。

プラントの安全性と生産性の根幹を担う、最も過酷なシール条件。そこでは、一般的なガスケットでは到底太刀打ちできません。このような究極の要求に応えるべく開発されたのが、うず巻形ガスケットの最高峰「バルカー No. 6590シリーズ(通称:ブラックタイト)」です。

この記事では、バルカー社の公式製品資料に基づき、ブラックタイトがなぜ数あるシール材の中でも最高レベルの信頼性を誇るのか、その圧倒的な性能の秘密から、能力を最大限に引き出すための正しい選定・使用方法まで、徹底的に解説します。

第1部:ブラックタイトとは?その構造と圧倒的な性能の核心

ブラックタイトは、高温・高圧に対応する「うず巻形ガスケット」ファミリーの中でも、中核をなすハイエンドモデルです。その基本構造は、V字型に成形された金属の薄帯(金属フープ)と、シール材となるクッション材(フィラー)を交互に渦巻き状に巻き上げたものです 。この構造が持つ優れた弾性とシール性に加え、ブラックタイトを特別な存在にしているのが、その「フィラー」にあります。

性能の核心:究極のフィラー材「バルカホイル®(膨張黒鉛)」

バルカー No. 6590シリーズのフィラーには、バルカー社が誇る高性能シール材「バルカホイル®(膨張黒鉛)」が使用されています 。この膨張黒鉛こそが、ブラックタイトに他の追随を許さない、圧倒的な性能をもたらす源泉です。

  • 驚異的な使用温度範囲: 膨張黒鉛は、極めて広い温度範囲でその特性を維持します。これにより、ブラックタイトは-270℃の極低温から450℃の高温まで、一つのガスケットでカバーすることが可能です 。LNG(液化天然ガス)や液体窒素といった極低温流体から、発電所の高温高圧蒸気まで、この一つのガスケットで対応できる汎用性の高さは、他のシール材にはない大きな強みです 。
  • 熱・圧力サイクルへの優れた追従性: ブラックタイトの最も特筆すべき性能の一つが、運転と停止を繰り返すことで生じる熱サイクルや圧力サイクルに対する優れた追従性です 。膨張黒鉛は、高温に長時間晒されても「へたり(応力緩和)」が非常に少ない特性を持っています。これにより、一度締め付ければボルトの締付力が長期間維持され、温度や圧力が激しく変動する過酷な条件下でも、増締めをほとんど必要とせずに安定したシール性能を持続します 。
  • 優れた耐薬品性と耐放射線性: 黒鉛は化学的に非常に安定した物質であり、後述の強酸化性流体などを除く、多くの化学薬品に対して優れた耐食性を示します。また、耐放射線性にも優れているため、厳しい品質管理が求められる原子力関連施設でも使用実績があります 。

この究極のフィラー材と、金属フープが織りなす緻-密なうず巻き構造の組み合わせにより、ブラックタイトはプラントの最もクリティカルな部分を支える、絶対的な信頼性を確立しているのです。

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第2部:ブラックタイトの性能を100%引き出すための正しい選定と使い方

ブラックタイトの圧倒的な性能は、正しい知識に基づいた選定と施工によってはじめて100%発揮されます。

1. 使用範囲の確認 — 最も過酷な領域をカバー

まず、使用条件がブラックタイトの守備範囲内にあるかを確認します。

  • 温度: 最高使用温度は450℃です 。これを超える場合は、マイカフィラー製品(M590シリーズ)などの特殊高温用ガスケットの検討が必要です 。
  • 圧力:
    • 水系流体: 最高43MPa(クラス2500)まで対応 。
    • 油系流体、空気・窒素ガスなど: 30MPaまで対応 。
  • 不適な流体: ブラックタイトは優れた耐薬品性を持ちますが、万能ではありません。
    濃硫酸、濃硝酸などの酸化性酸、支燃性ガス(酸素など)には、グラファイトが侵される可能性があるため、使用できません 。これらの流体には、PTFEフィラーを用いたホワイトタイト(No. 7590シリーズ)を選定する必要があります 。

2.【最重要】内輪の必要性を正しく理解する

ブラックタイトの選定において、最も重要な判断の一つが「内輪の要否」です。製品資料には、「No.6591(外輪付)は内径側に異常変形を起こす恐れがあるため、できるだけ内外輪付を使用してください」と明確に記載されています 。

内輪の重要な役割:

  • 座屈防止: 高い締付力をかけた際に、ガスケット本体が内径側へ変形(座屈)するのを防ぎます。
  • 高締付力の保持: 内輪が圧縮ストッパーの役割を果たし、締付力を安定させます。
  • 破損(バラケ)防止: うず巻き構造の内径側を保護し、破損を防ぎます。

ブラックタイトを選定する際は、原則として「内輪付(No. 6592)」または「内外輪付(No. 6596)」の形状を選択すると覚えてください。特に平面座フランジには内外輪付が強く推奨されます 。

3.【応用編】極低温への最適化 —「極低温用ブラックタイト(No. 6590VCシリーズ)」

LNG、液体窒素、液体水素といった極低温(-162℃以下)のシールには、標準の6590シリーズをさらに進化させた「極低温用ブラックタイト(No. 6590VCシリーズ)」が最適です 。

これは、標準品をより柔軟に製造することで、金属が収縮し硬化する極低温下でもフランジ面への追従性を高め、低面圧時でも高いシール性を発揮するように特別に設計されたガスケットです 。極低温流体を扱うラインでは、このVCシリーズの採用が推奨されます 。

最終章:答えはここにある。「複雑な選定・加工はダイコーへ」

バルカー No. 6590シリーズ(ブラックタイト)は、その圧倒的な性能で、プラントの最もクリティカルな部分の安全を支える、まさに「最後の砦」とも言えるガスケットです。しかし、その性能を最大限に引き出すためには、フランジの形状、圧力クラス、そしてフープや内外輪の材質選定まで、極めて専門的な知識が求められます。

「フランジの材質が特殊合金だが、電食を防ぐためにフープと内外輪の材質は何を選べば良いか?」
「熱交換器用に、パス(仕切り板)の付いた特殊な形状のブラックタイトが必要だ」
「緊急のメンテナンスで、規格にない大口径の極低温用ブラックタイトを、今日中に製作してほしい」
このような、カタログの標準品コードを眺めるだけでは決して答えの出ない、現場固有の課題。それに対して、50年以上の経験に裏打ちされた専門知識(ノウハウ)と、それを形にする加工技術(ソリューション)の両輪で応えることこそ、工業用製品の加工メーカーである株式会社ダイコーの真価です。

専門家による最適なソリューション提案

ダイコーでは、お客様の使用条件(流体、温度、圧力、フランジの規格・材質など)を専門の技術スタッフが詳細にヒアリング。標準のブラックタイトが最適か、極低温用のVCシリーズが必要か、はたまた酸化性流体のためホワイトタイトにすべきかを的確に判断します。電食リスクを考慮したフープ・内外輪の材質選定まで、豊富な知見からお客様の設備に最適な仕様をご提案します。

自社製造によるオーダーメイド対応力

ダイコーは、うず巻形ガスケットの製造設備を自社で保有しており、お客様のあらゆるご要望に迅速かつ柔軟に対応できます。JISやJPI、ASMEといった各種規格品はもちろんのこと、規格にない特殊な寸法のガスケットや、熱交換器用の枝付 、楕円形や角形といった異形品  まで、図面一枚からオーダーメイドで製作。緊急のトラブル時にも、その機動力を最大限に発揮します。

材質の選定に迷ったとき、特殊な加工が必要なとき、あるいはどこに頼めば良いか分からない課題に直面したとき。その答えは、常にここにあります。複雑な選定・加工はダイコーへ — どうぞ、お気軽にご相談ください。

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