ニチアス TOMBO No.1834R-GRシリーズ|高温・高圧・極低温を制する、うず巻形ガスケットの最高峰「グラシールボルテックス」【徹底解説】株式会社ダイコー
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ニチアス TOMBO™ No.1834R-GRシリーズ|高温・高圧・極低温を制する、うず巻形ガスケットの最高峰「グラシールボルテックス」徹底解説
「高温高圧の蒸気ラインで、絶対に漏洩が許されない」「極低温配管で、熱サイクルに耐えうる信頼性の高いガスケットが必要だ」「石油化学プラントの重要機器で、長期にわたり安定したシール性能を維持したい」…。
プラントの安全性と生産性の根幹を担う、最も過酷なシール条件。そこでは、一般的なガスケットでは到底太刀打ちできません。このような究極の要求に応えるべく、ニチアス株式会社がその技術の粋を結集して開発したのが、うず巻形ガスケットの最高峰「TOMBO™ No. 1834R-GRシリーズ(通称:グラシールボルテックスガスケット)」です。
この記事では、グラシールボルテックスがなぜ「うず巻形ガスケットの中で最も多く使用される」のか、その圧倒的な性能の秘密から、能力を最大限に引き出すための正しい選定・使用方法まで、徹底的に解説します。
第1部:グラシールボルテックスとは?その構造と圧倒的な性能の核心
グラシールボルテックスは、高温・高圧に対応する「うず巻形ガスケット(ボルテックスガスケット)」ファミリーの中でも、中核をなすハイエンドモデルです。その基本構造は、V字型に成形された金属の薄帯(金属フープ)と、シール材となるクッション材(フィラー)を交互に渦巻き状に巻き上げたものです 。この構造が持つ優れた弾性とシール性に加え、グラシールボルテックスを特別な存在にしているのが、その「フィラー」にあります。
性能の核心:究極のフィラー材「膨張黒鉛(グラシール®)」
TOMBO™ No. 1834R-GRシリーズのフィラーには、ニチアスが世界に誇る高性能シール材「膨張黒鉛(グラシール®)」が使用されています 。この膨張黒鉛こそが、グラシールボルテックスに他の追随を許さない、圧倒的な性能をもたらす源泉です。
- 驚異的な使用温度範囲: 膨張黒鉛は、極めて広い温度範囲でその特性を維持します。これにより、グラシールボルテックスは-270℃の極低温から、酸化雰囲気中で450℃、非酸化性雰囲気であれば最高800℃という驚異的な使用温度範囲をカバーします 。極低温から、発電所の高温高圧蒸気まで、この一つのガスケットで対応が可能です。
- 長期安定性を実現する、低い応力緩和性: 高温に長時間晒されても「へたり」が非常に少ないのが膨張黒鉛の大きな特徴です。これにより、ボルトの締付力が長期間維持され、熱サイクルが繰り返されるような厳しい条件下でも、安定したシール性能を持続します。
この究極のフィラー材と、金属フープが織りなす緻密なうず巻き構造の組み合わせにより、グラシールボルテックスは「発電所や石油化学コンビナートなどの配管・機器など、様々な用途で最も多く使用される」標準器としての地位を確立しているのです 。

第2部:グラシールボルテックスの性能を100%引き出すための正しい選定と使い方
グラシールボルテックスの圧倒的な性能は、正しい知識に基づいた選定と施工によってはじめて100%発揮されます。
1. 使用範囲の確認 — 最も過酷な領域をカバー
まず、使用条件がグラシールボルテックスの守備範囲内にあるかを確認します。
- 温度:
- 水系流体: 450℃(非酸化性流体・締切り形フランジでは650℃)
- 油・ガス系・腐食性流体: 450℃(非酸化性流体・締切り形フランジでは800℃)
- 低温流体: -270℃
- 圧力:
- 水系流体: クラス2500(約43MPa)まで対応
- 油・ガス系・腐食性流体: クラス1500(約26MPa)まで対応
- 低温流体: 20MPaまで対応
このスペックは、プラントに存在するほとんどの高温・高圧・極低温ラインをカバーする、極めて広範なものです。
2.【最重要】内輪の必要性を正しく理解する
グラシールボルテックスの選定において、最も重要な判断の一つが「内輪の要否」です。製品資料には、フィラー材がNA(ノンアス)以外の場合(つまり、グラシールボルテックスの場合)は、必ず内輪を付けるように明確に指示されています 。
内輪の重要な役割:
- 座屈防止: 高い締付力をかけた際に、ガスケット本体が内径側へ変形(座屈)するのを防ぎます 。
- 高締付力の保持: 内輪が圧縮ストッパーの役割を果たし、締付力を安定させます 。
- 破損(バラケ)防止: うず巻き構造の内径側を保護し、破損を防ぎます 。
グラシールボルテックスを選定する際は、原則として「内輪付」または「内外輪付」の形状を選択すると覚えてください。
3. フランジ形状に合わせた適正なガスケット形状の選定
うず巻形ガスケットは、フランジのシール面の形状(フランジ座)に合わせて、適切な形状を選定する必要があります。
- 平面座(RF)/ 全面座(FF)フランジ: 最も一般的な平坦なフランジには、ガスケットの芯出しを容易にし、過剰な締め付けを防ぐ「内外輪付」が最適です 。
- はめ込み形(M&F)/ 溝形(T&G)フランジ: フランジ自体にガスケットをはめ込む溝がある場合は、「内輪付」または内外輪のない「基本形」を選定します 。
4.【厳守】禁止流体と推奨ボルト
禁止流体: グラシールボルテックスは優れた耐薬品性を持ちますが、万能ではありません。
- 強酸化性流体(酸化性酸、酸化性塩、ハロゲン化合物): グラシール(膨張黒鉛)が侵される可能性があるため、使用できません 。これらの流体には、PTFEフィラーを用いたナフロンボルテックス(9090シリーズ)を選定する必要があります 。
- 支燃性ガス(酸素など): フィラーに含まれる有機分が酸化消失する可能性があるため、使用できません 。酸素ラインには専用のナフロンボルテックス(9090-OXシリーズ)が必要です 。
推奨ボルト: グラシールボルテックスは、その高いシール性能を発揮するために、一般的なシートガスケットよりも大きな締付力を必要とします。そのため、ボルトにはSNB7などの高張力ボルトを使用することが強く推奨されます 。
最終章:答えはここにある。「複雑な選定・加工はダイコーへ」
TOMBO™ No. 1834R-GRシリーズは、その圧倒的な性能で、プラントの最もクリティカルな部分の安全を支える、まさに「最後の砦」とも言えるガスケットです。しかし、その性能を最大限に引き出すためには、フランジの形状、圧力クラス、そしてフープや内外輪の材質選定まで、極めて専門的な知識が求められます。
「フランジの材質が特殊合金だが、電食を防ぐためにフープと内外輪の材質は何を選べば良いか?」
「熱交換器用に、パス(仕切り板)の付いた特殊な形状のグラシールボルテックスが必要だ」
「緊急のメンテナンスで、規格にない大口径のグラシールボルテックスを、今日中に製作してほしい」
このような、カタログの標準品コードを眺めるだけでは決して答えの出ない、現場固有の課題。それに対して、50年以上の経験に裏打ちされた専門知識(ノウハウ)と、それを形にする加工技術(ソリューション)の両輪で応えることこそ、工業用製品の加工メーカーである株式会社ダイコーの真価です。
専門家による最適なソリューション提案
ダイコーでは、お客様の使用条件(流体、温度、圧力、フランジの規格・材質など)を専門の技術スタッフが詳細にヒアリング。グラシールボルテックスが最適か、あるいは450℃を超える領域ではGS/GM/GHシリーズが必要か、はたまた腐食性流体にはナフロンボルテックスが適しているかを的確に判断します。電食リスクを考慮したフープ・内外輪の材質選定まで、豊富な知見からお客様の設備に最適な仕様をご提案します。
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