ダイコー Dパッキン|低締付力で確実なシールを実現するEPDM成形ガスケットの決定版【徹底解説】
「樹脂製のフランジなので、強い力で締め付けられない」「フランジ面に多少の歪みがあるのか、シートガスケットだと漏れが止まらない」「薬品ラインでゴムの弾性は欲しいが、耐薬品性も確保したい」…。
配管フランジのシールにおいて、このような課題は頻繁に発生します。特に、高い締付力をかけられない塩ビ(PVC)配管やFRP配管、ガラスライニングされたフランジなどでは、硬いシート状のガスケットでは十分なシール性能を発揮できないケースが少なくありません。
こうした現場の切実な声に応えるため、工業用製品の加工メーカーである株式会社ダイコーが提供するのが、独自の断面形状を持つ高性能成形ガスケット「Dパッキン」です。
この記事では、株式会社ダイコーの公式総合カタログに基づき、Dパッキンがなぜ「低締付力」で「高いシール性」を実現できるのか、その構造の秘密から、用途に応じた2つのタイプの使い分け、そしてその能力を最大限に引き出すための正しい知識まで、徹底的に解説します。
第1部:ダイコー Dパッキンとは?その構造と卓越したシール性能
Dパッキンは、一般的な打ち抜き加工で作られるシート状のゴムガスケットとは一線を画す、金型を用いて精密に加圧成形されたガスケットです 。これにより、寸法精度が非常に高く、安定した品質を誇ります。その最大の特徴は、独自の断面形状にあります。
性能の核心:2本のOリング状凸部が生み出す驚異のシール性
Dパッキンの断面をよく見ると、フランジのシール面に接する部分に、2本のOリング状の凸部(リブ)が設けられていることがわかります 。
ボルトを締め付けると、この2本の凸部に力が集中します。これにより、ガスケット全体を強く圧縮しなくても、シールに必要な面圧(線圧)を効率的に確保することができるのです。
この構造がもたらすメリットは計り知れません。
- 低締付力での確実なシール: 凸部に力が集中するため、平坦なシートガスケットに比べてはるかに低い締付力(低面圧)で優れたシール性を発揮します 。これは、高い締付力をかけられない樹脂製フランジ(塩ビなど)や樹脂ライニングフランジにとって、まさに理想的な特性です 。
- 寸法安定性と信頼性: 金型で一つひとつ成形されるため、打ち抜き加工品に比べて寸法公差が小さく、常に安定した形状と性能を発揮します 。
- 優れたフランジ追従性: ベースとなるゴムの弾性と、Oリング状凸部の柔軟性により、フランジ面の多少の傷や歪み、凹凸にもしっかりと追従し、漏れの発生を防ぎます。

第2部:用途で選ぶ2つのDパッキン —「EPDMゴム単体」と「PTFE被覆品」
ダイコーでは、Dパッキンに2つのタイプをラインナップしており、使用する流体や条件によって使い分けることが重要です。
1. Dパッキン(EPDMゴム単体)
水系流体のスペシャリストとして、幅広い一般配管で活躍する標準タイプです。
- 構造と材質: 材質には、耐候性、耐オゾン性、耐水蒸気性に優れたEPDM(エチレンプロピレンゴム)が採用されています 。EPDMは、特に水道水や工業用水、海水といった水系の流体に対して安定した性能を長期間維持します。
- 使用範囲:
- 使用温度範囲: -40℃~100℃
- 最高使用圧力: 0.98MPa(約10kgf/cm²)
- 最適な用途: 塩ビ配管やポリエチレン管などを含む、各種水系の配管ライン。特に、高い締付力をかけられない樹脂配管のフランジシールに最適です。
2. Dパッキン PTFE被覆(EPDM成形PTFE被覆品)
ゴムの弾性とPTFEの耐食性を融合させた、化学薬品ライン向けのハイブリッドタイプです。
- 構造と材質: EPDMゴムで成形されたDパッキンの表面(接液面)を、ふっ素樹脂(PTFE)フィルムで一体密着させた構造です 。これにより、「ゴムの優れた弾性」と「PTFEの万能な耐薬品性・防食性」という、双方の長所を兼ね備えることに成功しました 。
- 使用範囲:
- 使用温度範囲: -40℃~120℃
- 最高使用圧力: 0.98MPa(約10kgf/cm²)
- 最適な用途: EPDMゴム単体では耐えられない、酸、アルカリ、有機溶剤といった腐食性流体を扱う配管ラインに最適です 。特に、ガラスライニングされたフランジなど、締付力が制限され、かつ高い耐薬品性が求められるような厳しい条件下で、その真価を発揮します。カタログの36ページには詳細な「耐薬品性一覧」が掲載されており、ガソリンや各種アルコールはもちろん、多くの酸やアルカリ、溶剤に対して使用可能(○)であることが示されています 。
第3部:Dパッキンの性能を最大限に引き出すために
Dパッキンは非常に優れたガスケットですが、その性能は正しい知識と施工によってはじめて100%発揮されます。
使用上の重要注意事項
- 圧力と温度のバランスを考慮する: Dパッキンの使用範囲は、温度と圧力がそれぞれ上限値内であっても、両方が同時に限界値に近い条件では使用できない場合があります。カタログには「圧力と耐熱温度は使用条件により反比例します」という注意書きがあり 、高温かつ高圧のような厳しい条件下では、事前に専門家へ相談することが不可欠です。
- PTFE被覆品の耐薬品性の限界を理解する: PTFE被覆品は極めて優れた耐薬品性を持ちますが、万能ではありません。例えば、高温のフッ素ガスや溶融アルカリ金属など、一部の特殊な化学薬品には侵される可能性があります 。また、カタログの耐薬品性一覧でも、王水やフッ酸、臭素などに対しては使用不可(×)と示されています 。特殊な流体に使用する際は、必ず適合性を確認する必要があります。
- 正しい締付管理: Dパッキンは低締付力でシールできるのが長所ですが、締め付けが不均一な「片締め」は、Oリング状凸部への不均一な応力集中を招き、漏れやガスケットの破損につながります。ボルトは必ず対角線上に、数回に分けて均等に締め付ける「対角締め」を徹底してください。
最終章:答えはここにある。「複雑な選定・加工はダイコーへ」
ダイコーのDパッキンは、その独自の構造により、特に低圧の水系配管や薬品配管において、他のガスケットでは得られない高い信頼性を提供します。
しかし、実際の現場では、標準品だけでは解決できない課題が必ず存在します。
「カタログに掲載されている300Aを超える場合は製作できないか?」
「PTFE被覆品でも対応できない特殊な薬品ラインだが、ゴムの弾性はどうしても必要だ。何か良い材質はないか?」
「Dパッキンを使用する塩ビフランジの電食対策として、最適な絶縁ボルトもセットで提案してほしい」
このような、カタログのスペック表を眺めるだけでは決して答えの出ない、複雑で高度な課題。それに対して、50年以上の経験に裏打ちされた専門知識(ノウハウ)と、それを形にする加工技術(ソリューション)の両輪で応えることこそ、ダイコーの真価です。
専門家による最適なソリューション提案
ダイコーでは、お客様の使用条件(流体、温度、圧力、フランジ材質など)を専門の技術スタッフが詳細にヒアリング。EPDM製の標準Dパッキンで十分なのか、PTFE被覆品が必要なのか、あるいはフッ素ゴム(FKM)など、より高性能な材質での特殊成形が必要なのかを的確に判断し、最適なソリューションをご提案します。電食対策においても、Dパッキンと絶縁ボルト・ワッシャーを組み合わせたトータルでのご提案が可能です。
シート材料からのオーダーメイド対応
Dパッキンは成形品ですが、ダイコーではシート材料からの製作が可能です。これにより、規格にない特殊な寸法や形状でも、お客様のご要望に合わせてオーダーメイドで製作することができます。
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Dパッキンのご紹介
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