バルカーうず巻形ガスケットとは?|高温・高圧・熱サイクルの課題を解決する3大メリット【課題解決】株式会社ダイコー
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バルカーうず巻形ガスケットとは?|高温・高圧・熱サイクルの課題を解決する3大メリット【課題解決】
「高温・高圧の蒸気ラインで、ソフトガスケットが耐えきれず漏洩した」「運転と停止を繰り返す設備で、温度変化の度にガスケットがヘタって漏れてしまう」「メンテナンスの際、フランジに焼き付いたガスケットを剥がすのに半日もかかっている」…これらは、プラントの心臓部とも言える重要ラインで発生する、最もクリティカルなシールに関する課題です。
これらの課題に対し、”金属”と”非金属”の長所を組み合わせることで究極の解を提示するのが、株式会社バルカーの「うず巻形ガスケット」です。
この記事では、この高性能セミメタリックガスケットが現場にもたらす3つの絶大なメリットを深掘りし、皆様が抱える最も困難なシール課題をどのように解決するのか、そして数あるラインナップから最適な一品を選ぶための具体的な指針を、専門的な視点から徹底的に解説します。
第1部:なぜ選ばれるのか?うず巻形ガスケットが現場にもたらす「3大メリット」
うず巻形ガスケットの圧倒的な性能は、他のガスケットとは全く異なる、その精緻な複合構造に集約されています。
- フープ: V字形に成形された金属の薄帯。ガスケットの骨格として、高い圧力に耐える強度と、バネのような弾力性(復元性)を生み出します。
- フィラー: フープの隙間を埋めるクッション材。膨張黒鉛やPTFEといった非金属材料が、フランジ面の微細な凹凸に密着し、高いシール性能を発揮します。
この金属(フープ)と非金属(フィラー)を交互に渦巻状に巻き上げたハイブリッド構造が、他の単一素材のガスケットでは決して到達できない、以下の3つの強力なメリットを生み出し、現場の課題を解決します。
メリット1:【高温・高圧に耐える】ソフトガスケットの限界を遥かに超える「卓越した機械的強度と耐熱性」
プラントの主蒸気ラインや高圧ガスラインなど、温度・圧力が極めて高い環境では、ゴムやPTFEを主体とするソフトガスケットは、圧力によって押し潰されたり(圧壊)、熱で溶融・炭化したりしてしまい、シール機能を維持できません。
うず巻形ガスケットは、金属製のフープが構造的な骨格となることで、極めて高い圧力に耐えることができます。 カタログに掲載されている代表的な「ブラックタイト」(No.6590シリーズ)のP-T線図を見ても、実に最高30MPaクラスという、ソフトガスケットとは比較にならないほどの高圧領域まで対応可能なことが分かります。
さらに、フープとフィラーの材質を適切に選定することで、極低温(-270℃)から超高温(最高1180℃)まで、非常に幅広い温度範囲をカバーできます。
▼課題解決事例
課題: 発電所の高圧蒸気ライン(450℃, 20MPa)で、従来の高性能シートガスケットでは長期的な安定性に欠け、頻繁な漏洩パトロールが必要だった。
うず巻形ガスケットによる解決: 高温・高圧用の「ブラックタイト」に変更。金属フープの強度と膨張黒鉛フィラーの耐熱性により、漏洩リスクが劇的に低減。パトロール工数が削減され、プラントの安全性が飛躍的に向上した。
メリット2:【緩まない】熱サイクルや振動に自動追従する「驚異的なシール追従性(復元性)」
プラントの運転開始・停止時には、配管の温度が常温から数百度まで大きく変動します。この際、配管やボルトは熱膨張・収縮を繰り返しますが、一度圧縮されると元に戻りにくいシートガスケットでは、この動きに追従できず、フランジ間に隙間が生まれてしまいます。これが、熱サイクル下での「ボルトの緩み」や「漏れ」の最大の原因です。
うず巻形ガスケットは、V字形のフープが渦巻状に積層された構造全体が、あたかも”金属製のバネ”のように機能します。 締め付けられるとバネのように縮み、内部に応力を蓄えます。フランジが熱膨張・収縮で僅かに開閉しても、蓄えられた応力でバネが伸び、常にフランジ面に圧力をかけ続ける(復元する)ことで、シール性を自動的に維持するのです。この優れたシール追従性は、ポンプや圧縮機周りのような、振動が激しい箇所においても絶大な効果を発揮します。
▼課題解決事例
課題: 運転と停止を繰り返すバッチ式の反応設備で、運転開始時の昇温過程で必ずフランジから漏れが発生。その都度、危険な高温下での増し締め(ホットボルティング)が必要だった。
うず巻形ガスケットによる解決: うず巻形ガスケットに変更。その優れた復元性により、昇温・降温時のフランジの動きにガスケットが自動的に追従。漏洩が根本的になくなり、危険な増し締め作業を撲滅できた。
メリット3:【剥がしやすい】メンテナンスを劇的に効率化する「優れた非固着性」
メンテナンス現場で最も時間と労力がかかる非生産的な作業の一つが、フランジ面に固着した古いガスケットの除去(ケレン作業)です。特に高温のラインでは、ガスケットが炭化・硬化してフランジに焼き付き、剥がすのに多大な時間を要するだけでなく、スクレーパーなどでフランジの重要なシール面を傷つけてしまうリスクも伴います。
うず巻形ガスケットは、カタログに「フランジに固着しにくいので清掃しやすく、ガスケットの交換も容易です」と明記されています。これは、シール面を形成するフィラーが金属フープの間に挟まれているため、フランジ面にべったりと張り付くことが少ないためです。これにより、高温下で長期間使用した後でも、比較的容易に取り外すことが可能です。
▼課題解決事例
課題: 高温の熱媒体油ラインで、定期メンテナンスの度にジョイントシートの固着に悩まされ、開放から復旧までに半日以上かかっていた。
うず巻形ガスケットによる解決: 高温用の「ブラックタイト」に変更したところ、固着が大幅に減少し、ケレン作業がほぼ不要に。交換作業が劇的に短縮され、プラントのダウンタイムを大幅に削減できた。

第2部:【課題別】最適なうず巻形ガスケットの選び方
これらの強力なメリットを持つうず巻形ガスケットですが、その真価は、現場の課題に合わせて最適な仕様を選び出すことで発揮されます。ここでは、具体的な課題から最適なフィラーを導き出すための選定ガイドを示します。
現場の課題 |
最適なフィラー |
バルカー製品シリーズ例 |
解説 |
コストを抑えたい一般蒸気ライン |
クリーンタイト (無機質紙) |
No.8590シリーズ |
性能をユーティリティー用途に絞り、経済性を追求。 |
高温・高圧の重要ライン |
ブラックタイト (膨張黒鉛) |
No.6590シリーズ |
高温・極低温に対応する、最も信頼性の高いスタンダード。 |
強酸・強アルカリの薬液ライン |
ホワイトタイト (PTFE) |
No.7590シリーズ |
膨張黒鉛が使えない腐食性流体への唯一の選択肢。 |
800℃を超える超高温域 |
マイカ or 特殊耐熱材 |
No.M590 / No.H590 |
酸化が激しい超高温環境に特化した特殊フィラー。 |
第3部:特殊仕様・複雑な選定はダイコーにご相談ください
うず巻形ガスケットの選定は、フィラーの選定で終わりではありません。フランジの形状に合わせた内外輪の有無、温度と耐食性を考慮したフープ・内外輪の金属材質の選定、さらには熱交換器用のリブ(隔壁)付きといった特殊形状への対応など、その組み合わせは文字通り無限に存在します。
「カタログに記載のない、複数の腐食性ガスが混合した流体に対して、最も安全なフープとフィラーの組み合わせは?」
「運転と停止を繰り返す激しい熱サイクル下で、最も長寿命が期待できるフィラーと金属材質の組み合わせは?」
「古い海外製の熱交換器で、図面も残っていない。現物から採寸して、リブ付きのうず巻形ガスケットを製作してほしい」
このような、カタログの標準情報と設計原則だけでは判断が不可能な究極の難題こそ、私たちガスケットのプロフェッショナル、ダイコーにご相談ください。
なぜ、複雑な選定・加工はダイコーに任せるべきなのか?
- 豊富な経験に基づく専門的なコンサルティング: 私たちは、机上のデータだけでなく、数多くのプラントで培ってきた豊富な経験と実績を持っています。お客様のプロセス全体を理解した上で、カタログの行間を読み解き、潜在的なリスクを考慮した、真に最適な仕様をご提案します。
- 高精度なリバースエンジニアリングとオーダーメイド加工: 図面がない場合でも、ご提供いただいた現物サンプルから寸法を正確に測定し、CADデータ化。自社工場で、あらゆる複雑な形状のうず巻形ガスケット(熱交換器用、異形品など)を、1枚からでも迅速かつ高精度に復元・製作いたします。
- 信頼できる技術パートナーとして: 特に高温・高圧ラインにおけるガスケットの選定ミスは、プラントの安全を根底から揺るがす重大なリスクです。私たちは単なる販売店ではなく、お客様の課題を共に解決する技術パートナーとして、専門的な知見で皆様のプラント運営を最後の最後までサポートします。
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