記事公開日
最終更新日
ニチアス株式会社 ボルテックスガスケット使用上の重要注意事項|漏洩を防ぐ現場の鉄則 株式会社ダイコー
-
-

ニチアス株式会社 ボルテックスガスケット使用上の重要注意事項|漏洩を防ぐ現場の鉄則
高温・高圧、熱サイクル、極低温…プラントの最も過酷な条件下で、最後の砦として絶大な信頼を寄せられる「ボルテックスガスケット(うず巻形ガスケット)」。その高いシール性能は、プラントの安定稼働に不可欠です。しかし、その高性能は、設計から選定、施工、メンテナンスに至るまで、厳格なルール(注意事項)を守って初めて、安全に発揮されることをご存知でしょうか。
この記事は、ボルテックスガスケットの性能を称賛するものではありません。その高性能の裏側に潜むリスクと、それを回避するために現場の誰もが絶対に知っておくべき「使用上の注意事項」にのみ焦点を当てた、実践的な安全マニュアルです。一つの見落としが重大な漏洩事故に繋がる可能性があるからこそ、この知識はあなたのプラントの未来を守る生命線となります。
第1部:【設計・選定段階の鉄則】トラブルを未然に防ぐ5つの重要確認事項
ボルテックスガスケットに起因するトラブルの多くは、不適切な「選定」に起因します。施工段階で問題を発生させないためにも、設計・選定時に以下の5つのポイントを必ず確認してください。
1. 【最重要】流体適合性の確認 ― 使ってはいけない流体の絶対厳守
ボルテックスガスケットの選定で、最も致命的なミスは「流体適合性の誤り」です。特に、最も広く使われるグラシール(膨張黒鉛)フィラーには、明確な弱点が存在します。
▼カタログが警告する禁忌流体
流体の種類 |
やってはいけないこと |
現象・リスク |
推奨される対策 |
強酸化性流体 (酸化性酸、酸化性塩、ハロゲン化合物) |
グラシールボルテックス(GR)の使用 |
フィラーであるグラシール(炭素)が酸化され、消失・劣化し、急速なシール性能の低下を招きます。 |
ナフロンボルテックス(PTFEフィラー)を選定する。 |
支燃性ガス (酸素など) |
グラシール(GR)およびNAボルテックスの使用 |
フィラーに含まれる有機分が酸化・燃焼し、シール性能を失う可能性があります。 |
酸素用ナフロンボルテックス(OX処理品)を選定する。 |
腐食性流体 |
NAボルテックスの使用 |
フィラーであるNAペーパー(無機紙)が薬品に侵され、ボロボロになります。 |
グラシールまたはナフロンボルテックスを選定し、流体に応じてフープ・内外輪の金属材質もSUS316Lや特殊合金に変更する。 |
この流体適合性のルールは、プラントの安全に関わる絶対的なものであり、決して軽視してはなりません。
2. 内輪の要否判断 ― 「座屈」を防ぐ生命線
カタログには「内輪は締付時にガスケット本体の内径側への変形を防ぐことにより、座屈防止、高締付力の保持、ガスケットの破損(バラケ)防止としての機能があります」と明記されています。
「座屈」とは、締付力や内圧によってガスケットの内径側が波打ち、シール機能が失われる致命的な破損モードです。これを防ぐため、以下の場合は必ず内輪を付けなければなりません。
- フィラー材がNA(無機ペーパー)以外の場合(つまり、グラシールやPTFEフィラーを使用する際は原則必須)
- フィラー材がNAであっても、圧力クラスが900以上、またはフランジの呼び径が650A (26B)以上の場合
このルールを無視すると、特に高圧条件下でガスケットが座屈し、突発的な大漏洩を引き起こす危険性があります。
3. フランジ適合性の確認 ― ボルテックスが使えないフランジ
ボルテックスガスケットは、その構造上、高い締付力を必要とします。そのため、全てのフランジで使用できるわけではありません。
- 低圧用フランジ(JIS 5K以下、真空フランジなど): フランジやボルトの強度が不足しており、シールに必要な締付力が得られないため、使用は推奨されていません。
- アルミニウムフランジ: 標準のボルテックスガスケット(フープ:ステンレス鋼)を使用すると、柔らかいアルミフランジのシール面を傷つけてしまいます。専用の「TOMBO No.1809ALシリーズ」を選定する必要があります。
- ガスケット座にV溝があるフランジ: ボルテックスガスケットはV溝には適しません。
4. ボルト材質の確認 ― 高張力ボルトは必須
カタログには「ボルテックスガスケットはシートガスケットに比べ、大きな締付力を必要とします。そのため、ボルト材質はSNB7などの高張力ボルトを使用することをお勧めします」と記載されています。一般的な軟鋼ボルトでは、必要な軸力を発生させることができず、初期漏れや緩みの原因となります。
5. 内外輪材質の確認 ― 炭素鋼の注意点
コストダウンのために内外輪の材質を炭素鋼にすることがありますが、カタログはその注意点を指摘しています。
- めっきの耐熱温度は200℃
- めっき成分の溶出: 微量な成分の溶出も嫌うクリーンなラインでは、ステンレス鋼製の内外輪を使用すべきです。

第3部:【施工・メンテナンスの鉄則】現場で守るべき4つのルール
適切なガスケットを選定できても、施工やメンテナンスを誤れば、その性能は台無しになります。
1. 取り扱いと取り付け ― 丁寧さと正確さ
- 無理な取り扱いの禁止: 特に大口径のガスケットは自重で変形したり、フープがバラけたりしやすい(破損)ため、数人で慎重に取り扱う必要があります。
- フランジ面の清掃: 取り付け前には、フランジ表面の錆、古い固着物、傷などを完全に除去し、清浄な状態にしてください。
- センタリングの徹底: ガスケットがフランジの片側に寄らないよう、必ず中心に正確に配置してください。外輪付きタイプは、外輪がボルトに接するように置くことで、容易にセンタリングが可能です。
2. ガスケットペースト ― 原則不要
カタログには「ガスケットペーストは原則として塗布する必要はありません」と記載されています。ボルテックスガスケットは、それ自体の性能でシールするように設計されています。ペーストを塗布すると、潤滑剤として作用し、過締め付けの原因となる可能性があります。
3. 再使用の絶対禁止
「ガスケットの再使用はできません。」 一度締め付けられたボルテックスガスケットは、金属フープとフィラーがフランジ面に馴染むように塑性変形しています。これを再使用しても、新品時と同じシール性能は決して得られず、漏洩の確実な原因となります。
4. 基本形(内外輪なし)の取り扱い
溝形フランジ(T&G)などで使用する基本形は、内外輪による保護がないため、「わずかな外力で変形することがあります」。特に慎重な取り扱いが求められます。
第4部:ルールブックで判断不能な時 ― 「複雑な選定・加工はダイコーへ」
ここまで解説してきたように、ボルテックスガスケットを安全に使いこなすためには、まるで法律の条文のように、数多くの厳格なルールを理解し、遵守する必要があります。
「カタログに記載のない、複数の腐食性ガスが混合した流体に対して、最も安全なフープとフィラーの組み合わせは?」
「運転と停止を繰り返す激しい熱サイクル下で、最も長寿命が期待できるフィラーと金属材質の組み合わせは?」
「古い海外製の熱交換器で、図面も残っていない。現物から採寸して、リブ付きのボルテックスガスケットを製作してほしい」
このような、ルールブックだけでは決して答えの出ない、究極の難題こそ、私たちガスケットのプロフェッショナル、ダイコーにご相談ください。
なぜ、複雑な選定・加工はダイコーに任せるべきなのか?
- 豊富な経験に基づく専門的なコンサルティング: 私たちは、机上のデータだけでなく、数多くのプラントで培ってきた豊富な経験と実績を持っています。お客様のプロセス全体を理解した上で、カタログの行間を読み解き、潜在的なリスクを考慮した、真に最適な仕様をご提案します。
- 高精度なリバースエンジニアリングとオーダーメイド加工: 図面がない場合でも、ご提供いただいた現物サンプルから寸法を正確に測定し、CADデータ化。自社工場で、あらゆる複雑な形状のボルテックスガスケット(熱交換器用、異形品など)を、1枚からでも迅速かつ高精度に復元・製作いたします。
- 信頼できる技術パートナーとして: 特に高温・高圧ラインにおけるガスケットの選定ミスは、プラントの安全を根底から揺るがす重大なリスクです。私たちは単なる販売店ではなく、お客様の課題を共に解決する技術パートナーとして、専門的な知見で皆様のプラント運営を最後の最後までサポートします。
製品に関するお問い合わせ
製品に関するお問い合わせ、ご購入や加工のお見積り・納期については、こちらよりお気軽にご相談ください。
ガスケット・パッキン・工業用製品の総合カタログ
ダイコー総合カタログ
このカタログは、ガスケット・パッキンをはじめとした工業製品を幅広く取り扱う株式会社ダイコーの製品情報を詳しく掲載した総合カタログです。
-
-