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導入事例/コラム

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ニチアス No.9010クッションガスケット選定ガイド|複雑な品番の完全解読マニュアル 株式会社ダイコー

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ニチアス No.9010クッションガスケット選定ガイド|複雑な品番の完全解読マニュアル

「ガラスライニングのフランジに、最適なガスケットが見つからない」「高い耐薬品性と、フランジ面の歪みに追従する柔軟性を両立させたい」「No.9010が良いと聞いたが、品番が複雑すぎて、どれを選べば良いのか全く分からない」…これは、高機能なシール材を求める多くの現場担当者が直面する、深刻な課題です。

この課題に対する究極のカスタマイズソリューションを提供するのが、ニチアス株式会社の「TOMBO™ No.9010」(ナフロン® PTFEクッションガスケット)、通称「包みガスケット」です。

この記事では、この高性能複合ガスケットの極めて複雑な品番体系を一つ一つ解き明かし、皆様が抱える課題に対して、無数の組み合わせの中から「最適な一品」を選び出すための具体的な指針を、専門的な視点から徹底的に解説します。

第1部:No.9010とは?― 「PTFE外皮」と「選べる中芯材」による究極の適応力

No.9010の価値は、異なる素材の長所を組み合わせた、そのユニークなハイブリッド構造と、それによってもたらされる圧倒的なカスタマイズ性にあります。

  • 外皮(ジャケット): 流体に直接触れる部分は、耐薬品性の王様「ふっ素樹脂(PTFE)」で覆われています。これにより、ほぼ全ての化学薬品に対する究極の耐食性を実現します。
  • 中芯材(インサート): PTFEジャケットの内部には、用途に応じて選べる、弾力性に富んだ様々なクッション材が封入されています。

この構造により、「耐薬品性はPTFE外皮で確保し、シール性能(耐熱性、耐圧性、柔軟性)は中芯材で調整する」という、究極の”適材適所”を一枚のガスケットで実現しているのです。

カタログダウンロードへの誘導バナー

第2部:【核心】品番解読 ― 4つの要素を理解し、最適なガスケットを導き出す

No.9010の品番は、カタログによるとTOMBO No.9010 - [外皮形状] - [中芯材質] - [適用寸法] - [中芯構造]という4つの主要な記号で構成されます。これを理解することが、最適なガスケット選定の鍵です。

要素1:【形状を選ぶ】外皮形状(3種類 + α)

最初の記号は、ガスケットの断面形状と製法を決定します。

記号 名称 構造・特長 主な用途
A 基本形 標準的な断面Y字形。一枚のシートから加工。 一般的な配管フランジ(最大外径1000mmまで)。
B 大口径対応型 断面Y字形。テープ状PTFEを融着して製作。 外径1000mmを超えるタンクマンホール、塔槽類。
AS 直角加工型 断面コの字(U字)形。液だまりしない。 医薬品・食品などコンタミネーションを嫌うライン。

▼ワンポイント:さらに信頼性を高める「外周処理」
カタログの注意事項には、真空ラインでの使用や、フランジ隙間が狭い場所への取り付け時に、外被の「めくれ」や「引き込み」を防止するため、外周を縫製(KA, KB, KS)または溶着(RA, RB, RS)したタイプを推奨しています。これは、A, B, ASタイプのいずれにも追加可能な重要なオプションです。

要素2:【性能を選ぶ】中芯材質(8種類以上)

2番目の記号は、ガスケットの耐熱性、耐圧性、柔軟性を決定する最も重要な要素です。(中芯総厚さにより異なります)

記号 中芯材 最高温度 特長・主な用途
5 No.1995 (ジョイントシート) 150℃ 最も標準的で経済的な仕様。一般的な薬液ラインに。
6 No.1995 + フェルト 150℃ ライニングフランジなど、シール面のうねりを吸収。
7 No.1120 (高機能シート) 150℃ No.1995より高い耐熱性が必要な場合に。
8 No.1120 + フェルト 150℃ 高温かつ、ライニングフランジなどのうねりがある場合に。
2 No.1880-GR (膨張黒鉛) 230℃ 高温用。蒸気や熱媒体油ラインに。
9 No.1120 + SUS網 200℃ 高温かつ、強度が必要な場合に。
3, 4 No.1993, 1995-W 150℃ 特殊なジョイントシート。

▼選定のポイント
まず使用温度で候補を絞り込みます。100℃以下なら「5」か「6」、150℃までなら「7」か「8」、それ以上なら「2」か「9」が基本です。次に、フランジ面が平滑でない(ライニングなど)場合は、**フェルト付き(記号6, 8)**を選ぶことで、シールの信頼性が格段に向上します。

要素3 & 4:【寸法と構造を選ぶ】適用寸法と中芯構造

3番目と4番目の記号は、ガスケットの寸法体系と、中芯の特殊な構造を指定します。

  • 適用寸法:
    • S: JIS配管フランジなどの規格寸法品
    • G: グラスライニングフランジ用の標準寸法
    • F: ナフロンライニング配管用の標準寸法
    • Z: 上記以外(図面指示など)の特注寸法
  • 中芯構造:
    • 記号なし: 単体
    • D: 2枚入り(厚みを増す場合など)
    • C: 波板入り(強度を高める場合)

▼【重要】ライニング配管には専用寸法を!
カタログでは「ライニング配管に規格寸法のガスケットを使用すると、内径側の寸法が異なるため、液だまりや漏れに繋がることがあります」と強く警告しています。グラスライニングには「G」、ナフロンライニングには「F」を必ず指定するか、フランジを実測した上で「Z」(指示寸法)で注文する必要があります。

第3部:【最重要】No.9010を安全に使いこなすための共通注意事項

No.9010は極めて多機能ですが、その特殊な複合構造ゆえに、他のガスケットにはない特有の注意点が存在します。

安全のための絶対ルール

  1. 浸透性の高い流体への注意
    カタログは「硝酸、エチレンオキサイド、ハロゲン」などの浸透しやすい流体に対して、長期間の使用でPTFE外被を貫通し、内部の中芯材を侵すリスクを警告しています。この場合、①早めに交換するか、②PTFEソリッドガスケット(No.1133など)へ代替することを推奨しています。
  2. 中芯材(特にフェルト)の防水管理
    中芯材にフェルトを含むタイプ(記号6, 8)は、「液体に濡れると圧縮破壊強度が低下します」。気密試験時の石鹸水や雨水が浸透するだけで、シール性能が失われる可能性があります。防水性の袋での保管や、施工後に濡れないようにする注意が不可欠です。
  3. 外皮の損傷は即、機能不全
    最も重要な原則です。このガスケットの耐薬品性は、たった一枚の薄いPTFE外皮に依存しています。工具をぶつける、引きずるなどの行為でピンホール一つでも傷がつけば、そこから腐食性流体が侵入し、中芯材を瞬く間に破壊します。ガラス製品のように、細心の注意を払って取り扱う必要があります。

第4部:特殊仕様・複雑な選定はダイコーにご相談ください

ここまで見てきたように、ニチアスNo.9010の選定は、さながら暗号解読のようです。

「150℃のグラスライニング配管、真空引きあり。最適な品番の組み合わせは?」
「外径1500mmの反応槽カバーで、中芯は耐熱性が欲しい。製作可能な仕様は?」
「図面支給で、ASタイプ(コの字形)のフェルト入りガスケットを1枚だけ特急で製作してほしい」
このような、カタログの標準情報だけでは決して答えの出ない、高度に専門的な判断やオーダーメイドの加工が必要となる場面では、ぜひ私たちガスケットのプロフェッショナル、ダイコーにご相談ください。

なぜ、複雑な選定・加工はダイコーに任せるべきなのか?

  • 専門的な製品選定サポート: 私たちは、No.9010の複雑な品番体系を完全に理解しています。お客様の使用条件を詳細にヒアリングし、無数にある組み合わせの中から、”オーバースペック”でも”スペック不足”でもない、真に最適な仕様をご提案します。
  • 高精度なオーダーメイド加工: 自社工場に最新のカッティングプロッターやウォータージェット加工機を完備。「適用寸法:Z(指示寸法)」のオーダーに完璧に対応します。お客様からいただいた図面や実測寸法を基に、あらゆる複雑な形状のガスケットを、1枚からでも迅速かつ高精度に製作いたします。
  • 信頼できる技術パートナーとして: ガスケットの選定ミスは、プラントの安全を根底から揺るがす重大なリスクです。私たちは単なる販売店ではなく、お客様の課題を共に解決する技術パートナーとして、専門的な知見で皆様のプラント運営をサポートします。

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