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導入事例/コラム

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ボルテックスガスケット選定ガイド|ニチアス株式会社製【完全版】株式会社ダイコー

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ボルテックスガスケット選定ガイド|ニチアス株式会社製【完全版】株式会社ダイコー

高温・高圧といった過酷な条件下で確実なシール性能が求められるプラント設備において、「ボルテックスガスケット(うず巻形ガスケット)」は最も信頼されるシール材の一つです。しかし、その高性能を最大限に引き出すためには、製品の構造を深く理解し、使用条件に合わせた極めて精密な選定が不可欠です。この記事では、ニチアス株式会社の技術資料を基に、ボルテックスガスケットの複雑な製品体系から正しい選定方法、トラブルを防ぐための注意点までを網羅的に解説します。

第1部:ボルテックスガスケットの基本構造と構成要素

ボルテックスガスケットの優れた性能は、その独自の複合構造に由来します。V字断面の金属薄板「フープ」と、クッション性に富む非金属の「フィラー」を交互にうず巻き状に巻き上げることで、金属の強度・復元性と、非金属の柔軟なシール性を両立させています。

 

性能の鍵を握る3つの主要構成要素

  • フィラー(充填材): ガスケットのシール性能を直接担う、最も重要な部分です。フランジ面の微細な凹凸に追従し、漏れを防ぎます。代表的な材質に、汎用性の高い膨張黒鉛(グラシール®)や、耐薬品性に特化したPTFE(ナフロン®)、経済性に優れたNAペーパーなどがあります。
  • フープ(金属薄板): V字に成形された金属の帯で、ガスケット全体の骨格となります。ボルトの締付力に対し、ばねのように反発することで高いシール面圧を維持し、温度や圧力の変動に対する優れた追従性を生み出します。標準材質はSUS304やSUS316ですが、耐食性や耐熱性が求められる場合は特殊合金も使用されます。
  • 内外輪(保護リング): ガスケット本体を保護し、シール性能を安定させるための重要な補助部材です。
    • 外輪: 過剰な締め付けによるガスケットの変形を防ぐストッパーの役割を果たすと共に、フランジへの正確なセンタリングを助けます。
    • 内輪: 締付時にガスケットが内径側へはみ出す「座屈」を防止し、流体によるフィラーの浸食を防ぎます。高温・高圧条件下では、この内外輪付きが標準となります。

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第2部:使用条件に応じた製品シリーズの選定

ボルテックスガスケットは、フィラー材や構造の違いにより、多種多様なシリーズがラインナップされています。ここでは、代表的な製品とその特長を解説します。

1. TOMBO™ No. 1834R-GRシリーズ|グラシール®ボルテックスガスケット

フィラー材に膨張黒鉛(グラシール®)を使用した、最も広く使用されるスタンダードかつ高性能なモデルです。 優れた耐熱性(最高450℃ / 非酸化性雰囲気下では800℃)と耐薬品性を持ち、高温・高圧から極低温(-270℃)まで、非常に幅広い条件下で使用可能です。熱サイクルがある厳しい条件でも、優れたシール性を長期にわたり維持します。

2. TOMBO™ No. 9090-IORシリーズ|ナフロン®ボルテックスガスケット

フィラー材にPTFE(ふっ素樹脂)を使用した、耐薬品性に特化したモデルです。 ほとんどの腐食性流体に対して安定しており、純酸素ガスのような支燃性ガスや、厳格な気密性が求められるラインにも対応可能です。化学プラントのプロセスラインやファインケミカル、医薬品製造設備など、高い耐食性やクリーン度が要求される場面で活躍します。

3. 高温・特殊用途向けシリーズ

450℃を超えるようなさらに高温の条件下や、特殊な環境向けにも専用のシリーズが用意されています。

  • ボルテックスガスケット-GS/-GM/-GHシリーズ (No.1836R): 酸化防止剤入りの特殊な膨張黒鉛を使用し、最高800℃までの高温条件に対応します。エチレンプラントのデコーキング工程など、過酷な熱履歴がかかる場所にも適しています。
  • ボルテックスガスケット-NM (No.1838R-NM): 耐酸化性のオリジナルフィラーを使用し、最高1000℃まで使用可能な超高温用グレードです。

第3部:複雑な製品番号を解読し、正しく発注する

ボルテックスガスケットの選定を難しくしている一因が、その複雑な製品番号体系です。しかし、この構成を理解すれば、仕様を正確に伝えることができます。

製品番号の構成例: 1834R - GR - EES

この番号は、主に以下の要素で構成されています。

① 基本番号 & 形状 ② ガスケット種別 ③ 材質コード
1834R (内外輪付) GR (グラシール) EES (外輪:304, 内輪:304, フープ:炭素鋼)

このように、「基本形状(内外輪の有無など)」「フィラーの種類」「各部材の材質」を組み合わせることで、一つの製品番号が構成されます。特に内外輪とフープの材質は、耐食性やコストに直結するため、使用条件に合わせて慎重に選定する必要があります。

第4部:漏洩を防ぐための設計・取扱いの重要注意点

最高品質のボルテックスガスケットも、設計や取扱いが不適切では性能を発揮できません。

設計・選定時のチェックポイント

  • ガスケット座の仕上げ: シール性能を確保するため、フランジ座の表面粗さは液体シールで6.3μm Ra以下、ガスシールで3.2μm Ra以下が推奨されます。
  • ボルトの材質: ボルテックスガスケットは高い締付力を必要とするため、ボルトはSNB7などの高張力ボルトの使用が推奨されます。
  • 内輪の必要性: フィラーが膨張黒鉛やPTFEの場合、また高圧・大口径の条件下では、ガスケットの座屈を防ぐために内輪付きが必須です。
  • 流体との適合性: 支燃性ガス(酸素など)や強酸化性流体には、グラシール(膨張黒鉛)フィラーは使用できません。必ずナフロン(PTFE)フィラーの専用品を選定してください。

取扱い・装着時の注意点

  • 丁寧な取扱い: 特に大口径品や内外輪のない基本形は変形しやすいため、慎重に取り扱ってください。
  • 再使用は厳禁: 一度使用し圧縮されたガスケットは、本来の性能を失っています。メンテナンス時は必ず新品に交換してください。
  • ガスケットペースト: 原則として不要ですが、フランジ面が荒れている場合などに限り、ごく薄く均一に塗布してください。

第5部:複雑な選定・特殊加工はダイコーへ

ボルテックスガスケットの選定は、フランジ規格、圧力クラス、温度、流体、そしてコストといった無数の要素を考慮する必要がある、非常に専門的な作業です。

「自社の使用条件に最適なフィラーと金属材質の組み合わせが分からない」「熱交換器用に特殊な形状のボルテックスガスケットが必要だ」「緊急で規格外のガスケットを製作してほしい」

このような複雑なご要望に対し、株式会社ダイコーは、長年の経験と豊富な製品知識、そして最先端の加工技術でお応えします。お客様のあらゆる使用条件をヒアリングし、最適な製品の選定から、図面一枚からの特殊品製作まで、一貫してサポートいたします。ボルテックスガスケットの選定でお困りの際は、ぜひ私たち専門家にご相談ください。

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高圧・高温などの厳しい環境に最適な、ボルテックスガスケットをはじめとする多様なセミメタルガスケットを豊富に取り揃えております。詳細につきましては、こちらのページをご覧ください。

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