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PTFEクッションガスケット選定ガイド|ニチアス株式会社製【徹底解説】株式会社ダイコー

PTFEクッションガスケット選定ガイド|ニチアス株式会社製【徹底解説】
化学プラントや腐食性流体を扱うラインにおいて、シールの選定は設備の安全性と寿命を左右する最重要課題です。その中で、卓越した耐薬品性を誇る「ふっ素樹脂(PTFE)ガスケット」は不可欠な存在です。しかし、その高性能を最大限に引き出すためには、製品の構造を深く理解し、使用条件に合わせた極めて精密な選定が求められます。この記事では、ニチアス株式会社の技術資料を基に、特に多種多様な組み合わせが存在する「TOMBO No.9010 ナフロン® PTFE クッションガスケット」を中心に、その複雑な選定方法から加工、使用上の注意点までを網羅的に解説します。
第1部:PTFEクッションガスケットの基本構造を理解する
TOMBO No.9010シリーズは、単純なPTFEシートではありません。これは、シール性能の根幹をなす「中芯材」と、それを腐食性流体から保護する「PTFE外皮」を組み合わせた、複合構造のガスケットです。この組み合わせによって、PTFE単体では得られない弾力性や耐圧性を実現しています。
製品性能を決定づける「中芯材」の種類
中芯材は、ガスケットの基本的なシール性能、耐熱性、そしてコストを決定します。カタログでは、以下のような中芯材がラインナップされています。
- TOMBO No.1995(クリンシル®ブラウン): 最も標準的で経済性に優れたノンアスベストジョイントシート。汎用的な用途に使用されます。
- TOMBO No.1993(クリンシル®スーパー): 標準品より耐蒸気性を向上させたグレード。
- TOMBO No.1120: 耐熱性・耐食性に優れたハイグレードなジョイントシート。
- フェルト付きジョイントシート: ジョイントシートにフェルトを追加することで、クッション性を向上させたタイプ。フランジ面のうねりや凹凸への追従性が高まります。
- TOMBO No.1880-GR(グラシール): 膨張黒鉛を主成分とし、高い耐熱性とシール性を誇ります。
シール形状と耐久性を左右する「外皮形状」
PTFE外皮の形状は、流体の液だまり防止や、ガスケットの耐久性に大きく影響します。
- Aタイプ(基本形): 最も標準的な形状ですが、構造上、内周側にわずかな隙間が生じ、液だまりが発生する可能性があります。
- ASタイプ(直角加工型): 内周側を直角に加工することで、液だまりのリスクを大幅に低減します。サニタリー性が求められるラインに最適です。
- 外周縫製・溶着タイプ (KA, RAなど): 負圧(真空)条件下や、フランジ面間が狭く無理な取り付けが想定される場合に、外皮の剥がれや損傷を防ぎ、ガスケットの機能を保護します。
第2部:複雑な製品番号を解読し、正しく選定する
TOMBO No.9010シリーズの選定が難しいとされる最大の理由は、その製品番号の複雑さにあります。しかし、この番号の構成を理解すれば、誰でも正確に仕様を指定できるようになります。
製品番号の構成例: TOMBO No.9010 - A - 6 - S
この番号は、以下の4つの要素で構成されています。
① 基本番号 | ② 外皮形状 | ③ 中芯材質 | ④ 適用寸法 |
---|---|---|---|
9010 | A (基本形) | 6 (No.1995 + フェルト) | S (規格寸法) |
このように、「外皮形状」「中芯材質」「適用寸法(フランジ規格)」、そして場合によっては「中芯構造(単体か2枚入りかなど)」を一つずつ指定することで、使用条件に完全一致したガスケットを選定することができます。
第3部:PTFEクッションガスケット使用上の重要注意点
PTFEクッションガスケットは非常に高性能ですが、その特性を理解せずに使用すると、思わぬトラブルにつながる可能性があります。
締付管理の重要性
PTFEクッションガスケットは、ジョイントシート単体と比較して許容される締付面圧が低く設定されています。過剰な締め付けはガスケットの圧縮破壊に直結するため、トルクレンチを用いた精密な締付管理が不可欠です。特に、フランジ面が荒れている場合やうねりがある場合は、通常より高い締付力が必要になることがあり、より一層の注意が求められます。
浸透性の高い流体への注意
硝酸やハロゲン化合物、エチレンオキサイドなど、分子が小さく浸透性の高い流体に対しては、長期間の使用でPTFE外皮を透過し、内部の中芯材を侵食する可能性があります。これにより、ガスケットが本来のシール性能を失うことがあります。このような流体に対しては、定期的な交換計画を立てるか、PTFEクッションタイプではなく、中実のPTFEガスケット(TOMBO No.9007シリーズなど)の使用を検討することが推奨されます。
水濡れと保管への配慮
特に中芯にフェルトを含むタイプは、気密試験時の石鹸水や雨水が内部に浸透すると、フェルトが軟化し、圧縮強度が低下することがあります。これにより、ガスケットが押し出されて面圧が低下し、漏れにつながるケースが報告されています。防水性の袋に入れて保管し、施工後も水に濡れないよう配慮することが重要です。
第4部:複雑な選定・特殊加工はダイコーへ
ここまで解説してきたように、PTFEクッションガスケットの選定は、多岐にわたる要素を複合的に判断する必要がある専門的な作業です。特に、規格外の寸法や特殊な形状が求められる場合、その難易度はさらに高まります。
「自社のグラスライニング配管に最適なガスケットの組み合わせが分からない」「図面から特殊な形状のガスケットを1枚だけ作りたい」「大口径のタンク用に、外周を溶着した特殊なガスケットが必要だ」
このような複雑なご要望に対し、株式会社ダイコーは、長年の経験と豊富な製品知識、そして最先端の加工技術でお応えします。
お客様の使用条件(流体、温度、圧力、フランジ形状)を詳細にヒアリングし、カタログに掲載されている無数の組み合わせの中から、最適な製品を選定。さらに、カッティングプロッターやウォータージェットといった加工機を駆使し、あらゆる形状のガスケットを1枚から製作可能です。複雑な選定や特殊な加工でお困りの際は、ぜひ私たち専門家にご相談ください。
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