記事公開日 2025/09/09

グランドパッキンとは？バルブ・ポンプ用製品の選び方と特長

バルブやポンプといった、工場やプラントに欠かせない流体制御機器。これらの機器の心臓部で、流体の漏れを確実に防ぐ重要な役割を担っているのが「グランドパッキン」です。ここでは、グランドパッキンの基本的な役割から、用途に応じた正しい選び方までを分かりやすく解説します。

グランドパッキンの役割と構造

グランドパッキンは、バルブの弁棒（ステム）や、ポンプの回転軸（シャフト）のように、回転したり往復運動したりする「軸」の周りにある「スタフィングボックス」と呼ばれる空間に詰め込むことで、内部の流体が外部に漏れるのを防ぐシール材です。

主に炭素繊維やふっ素樹脂（PTFE）繊維などの各種繊維を紐状に編み込み（編組）、潤滑剤や分散液（ディスパージョン）を染み込ませて作られます。これにより、高いシール性を保ちながら、軸がスムーズに動くことを可能にし、同時に軸が摩耗するのを防いでいます。

グランドパッキンの主な特長

※より過酷な条件下ではメカニカルシールが適していますが、グランドパッキンはその汎用性の高さから、今なお幅広いシーンで採用されています。

グランドパッキンは、使用される機器の動きによって大きく「バルブ用」と「回転機器用」に分けられます。それぞれ求められる性能が全く異なるため、適切な製品を選ぶことが機器の寿命と安定稼働の鍵となります。

バルブの弁棒（ステム）は、開閉時に動くだけで、回転機器のように常時高速で動くわけではありません。そのため、軸の動きへの追従性よりも、流体を完全に止める「高いシール性」が最優先されます。

求められる性能	高いシール性、耐熱性、耐圧性、耐薬品性
特徴的な材質	膨張黒鉛（グラシール）をリング状に成形したモールドパッキンや、炭素繊維を編組したパッキンなど、高温・高圧に耐え、馴染み性の良いものが多く使用されます。
選定のポイント	使用する流体、温度、圧力の条件に適合する材質を選ぶことが最も重要です。特に高温の蒸気ラインなどでは、耐熱性に優れた材質を選定する必要があります。

ポンプや攪拌機など、常時軸が回転する機器では、シール性はもちろんのこと、軸を傷つけない「潤滑性」と、摩擦熱を逃がす「放熱性」が非常に重要です。このため、意図的にごく少量の流体を漏らすことで、潤滑と冷却を行うのが一般的です。

求められる性能	低軸摩耗性、潤滑性、放熱性、シール性（制御された漏れ）
特徴的な材質	PTFE繊維や炭化繊維など、自己潤滑性に優れ、熱伝導性の良い繊維が多く使用されます。潤滑油やPTFEディスパージョンを含浸させ、摺動性を高めています。
選定のポイント	流体・温度・圧力に加え、軸の周速（PV値）を必ず考慮し、軸を攻撃しない材質を選ぶことが重要です。「漏れゼロ」を目指して締めすぎると、焼き付きの原因となり、機器の重大な損傷に繋がります。