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ボルテックスガスケットの正しい選定と使い方|設計・施工時の注意点を解説
ボルテックスガスケットの正しい選定と使い方|設計・施工時の注意点を解説
ボルテックスガスケットは、その優れたシール性能から多くのプラントや設備で利用されています。しかし、その性能を最大限に引き出すためには、設計段階での適切な製品選定と、施工時の正しい取り扱いが不可欠です。本記事では、ボルテックスガスケットをご使用いただく上での重要な注意事項 を網羅的に解説します。
設計・選定に関する注意事項
ガスケットの選定ミスは、漏洩などの重大なトラブルに直結します。以下のポイントを必ずご確認ください。
1. ガスケット座の仕上げ
ガスケット座は、JIS B 2220-2012の旋削仕上げとしてください 。推奨される表面粗さは以下の通りです。
- 液体シールの場合: 6.3µm Ra以下
- ガスシールの場合: 3.2µm Ra以下
2. ボルトの材質
ボルテックスガスケットは、一般的なシートガスケットと比較して大きな締付力を必要とします。そのため、ボルトの材質はSNB7以上の高張力ボルトの使用をお勧めします 。
3. 内輪・外輪のめっき処理
内輪・外輪の材質が炭素鋼の場合、保管中の錆発生を防ぐために表面めっき処理が施されています 。ご使用にあたり、以下の点にご注意ください。
- めっきの耐熱温度は200℃です。
- めっき成分の微量な溶出にも注意が必要な場合は、ステンレス鋼をご使用ください。
4. 内輪の必要性について
内輪は、締付時にガスケット本体が内径側へ変形することを防ぎ、座屈防止、高締付力の保持、ガスケットの破損(バラケ)防止といった重要な機能があります。特に以下の条件下では、必ず内輪付きの製品を選定してください。
- フィラー材がNA(非石綿)以外の場合。
- フィラー材がNAの時で、圧力レイティングがクラス900以上、またはフランジの呼び径が650A (26B)以上の場合。

5. 大口径ガスケットの場合
大口径のガスケットを高圧条件で使用する際には、エンドフォースによるガスケットやフランジの変形が生じる可能性がありますので、事前にご相談ください。
各種流体に対する推奨ガスケット
流体の種類によって最適なガスケットは異なります。誤った選定を避けるため、下表を参考に適切な製品をお選びください。
流体 | 注意事項 | 推奨ガスケット |
---|---|---|
支燃性ガス | グラシールボルテックス、NA ボルテックスは使用しないでください。グラシールおよびNAフィラーに含まれる有機分の酸化消失が起こる可能性があります。 | ● 酸素用ナフロンボルテックス (TOMBO No.9090-OX シリーズ) |
強酸化性流体 (酸化性酸、酸化性塩、ハロゲン化合物) |
グラシールボルテックスはグラシールが侵される可能性があるため使用しないでください。フープおよび内輪の材料は、使用条件に十分に耐えるものを選定してください。 | ● ナフロンボルテックス ● ボルテックスガスケット-GS、-GMGH、-NM |
腐食性流体 | NAボルテックスは、フィラーが侵されるため使用しないでください。 | ● グラシールボルテックス、ナフロンボルテックス (内外輪、フープ材質は流体に耐性のある材質をご使用ください) |
スリップオン溶接式フランジでの使用について
スリップオン溶接式フランジに使用する場合、突き合わせ溶接式フランジとはガスケット寸法が異なります。ご注文の際は、フランジの種類に応じてA形・B形・C形のいずれかをご確認ください。
使用上の注意事項
取り付けに際して
- ガスケットを取り付ける前にフランジ表面を清掃し、異物やキズのないことを確認してください。
- ガスケットは無理な状態で取り扱わないでください。
該当規格
関連する規格として以下があります。
- JIS F 0602 「船舶貨物管系用非石綿系ガスケット選定基準」
- 対象製品例:HUC TOMBO No.1834-NA、HUD TOMBO No.1834R-NA、KUD TOMBO No.1834R-GR、FUC TOMBO No.9090-IOR
メーカーのカタログや技術資料を参考に、お客様の条件に適したボルテックスガスケットをお選びください。もし製品の選定でお困りの点や、より詳細な技術的アドバイスが必要な場合は、お気軽に弊社までお問い合わせください。経験豊富なスタッフが、最適な製品選びをサポートいたします。
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