セラカバー®S 徹底ガイド|「薄さ20mm」で耐火性能をクリアする厨房排気ダクトの革命児
「集合住宅の厨房排気ダクト、防火区画を貫通する部分の耐火被覆が悩みの種だ」
「従来のロックウール50mm厚では、天井裏のスペースが圧迫されてしまい、設計の自由度が低い」
「施工が簡単で、信頼性の高い防火材はないか?」…。
マンションや複合ビルなどの建築設計において、厨房排気ダクトの防火対策は、建築基準法や火災予防条例を遵守する上で避けて通れない、極めて重要な課題です。特に、ダクトが壁や床といった防火区画を貫通する部分には、火災時に炎や熱が燃え広がるのを防ぐための確実な耐火被覆が求められます。
従来、この要求に応えるために「ロックウール50mm厚以上」を巻き付ける工法が広く採用されてきました。しかし、この方法は「かさばる」ため、天井裏の限られたスペースを圧迫し、設計の自由度を著しく低下させるという大きな問題を抱えていました。
この、「確実な耐火性能」と「省スペース化」という二律背反の難題を、ニチアス株式会社が独自の技術で解決した画期的な製品が、「セラカバー® S」です。
この記事では、セラカバー® Sがなぜ「わずか20mmの厚さで、ロックウール50mm厚と同等以上」という驚異的な性能を発揮できるのか、その構造の秘密と卓越した性能、そして正しい選定方法について、徹底的に解説します。

第1部:セラカバー® Sとは?—「薄さ」と「耐火性能」を両立する技術革新
セラカバー® Sは、ニチアスのロックウール(MG製品)ファミリーの中で、「集合住宅厨房排気ダクトの防火材」という特定の用途に特化して開発された、高性能耐火カバーです 。その最大の特徴は、従来の常識を覆す「薄さ」にあります。
性能の核心①:薄さ20mmで、ロックウール50mm厚と同等以上の耐火性能
「セラカバー® Sは、20mmの厚さで、ロックウール50mmの厚さと同等以上の性能を発揮します。」
これは、ニチアスが長年培ってきた耐熱・断熱技術の結晶であり、基材となる高密度(140kg/m³)ロックウールの性能を最大限に引き出す設計 により実現されています。
この「薄さ」がもたらすメリットは計り知れません。
- 天井裏の省スペース化: 従来のロックウール50mm厚と比較して、被覆後のダクト占有スペースを大幅に削減できます。ニチアスのカタログによれば、天井裏寸法がロックウール仕様と比べ、60mmも減少するため、階高を低く抑えることができ、空間の有効利用がはかれます 。
- 軽量化: 薄くなることで、ダクトにかかる重量負荷も軽減されます。
性能の核心②:ワンタッチ施工を可能にする「スナップオン構造」
セラカバー® Sは、MGマイティカバー®と同様に、あらかじめ配管の口径に合わせた「筒状(カバー)」に成形され、縦方向に切れ目が入った「スナップオンタイプ」です 。
- 簡単な施工: 施工時は、この切れ目を手で押し広げ、ダクトに「はめ込む(スナップオンする)」だけ。これにより、現場での採寸や巻き付け作業が不要となり、施工時間が劇的に短縮されます。
- 品質の均一化: 誰が施工しても均一な厚さと品質を確保でき、施工ミスによる耐火性能の欠損リスクを防ぎます。
性能の核心③:高耐久・高意匠の「ALGC外装」
セラカバー® Sは、標準でALGC(アルミガラスクロス)の外装材が一体化されています。
- 表面強度と耐久性: ガラスクロスで補強されたアルミ箔は、施工中や施工後のメンテナンス時にも傷つきにくく、破れにくい高い耐久性を誇ります 。
- 意匠性: 銀色の美しい仕上がりが、露出部分の美観を損ねません。
- 裁断性の向上: 標準外装材として採用されているため、裁断性も大幅に向上しています 。
第2部:【選定編】セラカバー® Sの確かな信頼性とラインナップ
セラカバー® Sは、その特定の用途(厨房排気ダクト)において、公的機関から数多くの認証・評定を取得しており、絶対的な信頼性を持って使用することができます。
2-1. 信頼性の証 — 各種認証・評定
- 国土交通大臣認定 不燃材(MFN-3404, NM-4365): 建築基準法に基づく不燃材料として認定されています 。
- (一財)日本消防設備安全センター 性能評定(評29-004号): 厨房排気ダクト用の防火材としての性能が公的に評定されています 。
- 東京都火災予防条例 適合: 「第3条の2第1項第2号ハの規定」に適合しており、東京都内での使用にも万全です 。
- 安全性: ホルムアルデヒドの発散量が最も少ない「F☆☆☆☆」等級に適合しており、室内でも安全に使用できます 。
2-2. ラインナップ — 直管とエルボ
セラカバー® Sは、厨房排気ダクトの形状に合わせて、あらかじめ成形された製品がラインナップされています。
直管用(TOMBO No. 1520-S):
- 形状: 長さ1000mmの筒状(スナップオンタイプ)。
- 仕様: 厚さ20mm、密度140kg/m³。
- 対応口径: 呼び径φ100, φ150 。
90°エルボ用 / 45°エルボ用:
- 形状: あらかじめ90°または45°の曲がり形状に成形された専用カバー。
- 仕様: 厚さ20mm、密度140kg/m³。
- 対応口径: 呼び径φ100, φ150 。
この「直管」と「エルボ」のプレハブ化されたパーツを組み合わせることで、現場での加工を最小限に抑え、ダクトライン全体の耐火被覆を迅速かつ高品質に完成させることができます。
第3部:【重要】取り扱い上の注意事項
セラカバー® S(ロックウール)は安全な材料ですが、人造鉱物繊維としての特性を理解し、正しく取り扱うことが重要です。
施工・保管時の必須確認事項
- 粉じん(ダスト)と皮膚刺激: 基材はロックウールです。切断・施工時には微細な繊維が飛散するため、防じんマスクの着用が推奨されます。また、繊維が皮膚に触れると一時的なかゆみを生じることがあるため、長袖の作業衣や保護手袋を着用してください 。
- 初期加熱時の発煙: セラカバー® Sは、繊維を固めるために有機バインダー(熱硬化性樹脂)を含んでいます。初めて高温(目安として150℃~200℃以上)にさらされる際、このバインダーが熱分解し、一時的に煙や臭気が発生します。これは製品の異常ではありませんが、必ず十分な換気を行ってください 。
- 水濡れ厳禁: 施工前、施工中において、水濡れは厳禁です。ALGC貼りであっても、端面から水分が浸入すると断熱性能が著しく低下します。常温・常湿の屋内で保管してください 。
最終章:答えはここにある。「選定のご依頼はダイコーへ」
セラカバー® Sは、その画期的な薄さと高い耐火性能、優れた施工性により、厨房排気ダクトの防火被覆における課題を高いレベルで解決します。しかし、実際の現場では、標準品だけでは対応できない課題も存在します。
「セラカバー® Sの対象口径(φ100, 150)以外のダクトを使いたいが、同等の耐火性能で薄型の断熱材はないか?」
「直管とエルボはセラカバー® Sを使うが、T管(分岐管)やレジューサー(異径管)部分の最適な処理方法を提案してほしい」
「ステンレスダクトへの施工で、電食(異種金属接触腐食)の懸念はないか?」
このような、カタログのスペック表だけでは決して答えの出ない、「選定」と「加工」が複雑に絡み合う課題。それに対して、50年以上の経験に裏打ちされた専門知識(ノウハウ)で応えることこそ、工業用製品の加工メーカーである株式会社ダイコーの真価です。
専門家による最適な「選定」
「セラカバー® Sが使えない大口径ダクトはどうすれば?」「電食防止のために、ステンレスダクトへの施工で注意すべき点は?」
「選定のご依頼はダイコーへ」とお任せください。ダイコーの専門スタッフが、お客様の図面、使用条件、法的要求を詳細にヒアリング。 セラカバー® Sが最適な箇所にはそれを推奨し、セラカバー® Sのラインナップにない口径や形状に対しては、MGボード®の高密度品(140kg/m³以上)やMGラスボード® など、セラカバー® Sと同等性能の基材を選定し、最適なソリューションをご提案します。
材質の選定に迷ったとき、標準品では対応できない特殊な加工が必要なとき、あるいはどこに頼めば良いか分からない課題に直面したとき。その答えは、常にここにあります。選定のご依頼はダイコーへ — どうぞ、お気軽にご相談ください。