MGベルト® 徹底ガイド|配管・ダクトの曲面断熱を極める「繊維垂直」の秘密
「丸いダクトや配管に、平らな断熱ボードを貼るのは効率が悪い」
「タンクの曲面に断熱材を施工したいが、柔軟性が足りず隙間ができてしまう」
「防火区画で、施工しやすくて信頼性の高い不燃断熱材はないか?」…。
プラントやビル建築において、配管(パイプ)や空調ダクト、タンクといった「曲面」を持つ設備の断熱は、常に施工者を悩ませる課題でした。平らな板状の断熱材(ボード)を無理に曲げて施工しようとすれば、割れや隙間(ヒートブリッジ)が発生し、断熱性能が著しく低下してしまいます。かといって、ロール状のブランケットでは、施工時の形状保持が難しい場合もあります。
この、「曲面への完璧な追従性」と「施工の容易さ」という、相反するような要求に応えるために、ニチアス株式会社が独自の技術で開発したのが、高性能ロックウール断熱材「MGベルト®」です。
この記事では、ニチアス株式会社の公式製品カタログに基づき、MGベルト®がなぜ曲面施工の「切り札」として多くの現場で選ばれ続けるのか、その性能の核心である「短冊状・繊維垂直構造」の秘密から、用途に応じたラインナップ、そしてその優れた素材性能を現場のニーズに合わせて最大限に引き出す「加工技術」まで、徹底的に解説します。

第1部:MGベルト®とは?— 柔軟性の核心「繊維垂直構造」
MGベルト®は、ニチアスが誇る高性能ロックウール断熱材「MGボード®」をベースに、革新的なアイデアで全く異なる特性を付与した製品です。
その構造は非常にユニークです。 まず、ベースとなる「MGボード」を短冊状(ストリップ状)に細かく切断します。次に、その切断した短冊を、繊維の方向が90度回転するように(つまり、繊維の目がボードの厚さ方向を向くように)並べ直し、その片面を寒冷紗(かんれいしゃ)と呼ばれる布で補強して一体化させています。
この「繊維を垂直(厚さ方向)に立てる」という製造方法こそが、MGベルト®に他の断熱材にはない圧倒的なメリットをもたらす源泉です。
MGベルト®が持つ4つの卓越した特性
- 驚異的な「柔軟性」と「曲面追従性」: これが最大の特長です。MGボード®は板状で曲げにくい性質を持ちますが、MGベルト®は細い短冊の集合体であるため、ロールカーペットのように自在に曲げることができます。これにより、円形の配管、丸ダクト、タンクのR部(曲面)といったあらゆる曲面に対して、隙間なく完璧に巻き付けることが可能です。
- 優れた「断熱性能」: 基材は、無数の微細な空気層を含み高い断熱性を持つロックウール(MGボード®)です 。これにより、配管やダクトからの熱損失を最小限に抑え、省エネルギーに大きく貢献します 。JIS A 9504規格にも適合しており、密度70kg/m³の「070」タイプは「保温帯1号」、密度120kg/m³の「120-ALGC」タイプは「保温帯2号」として、その性能が公的に認められています 。
- 高い「耐熱性」と「不燃性」: 原料は鉱石や高炉スラグであり、JIS規格に基づく熱間収縮温度は600℃以上を誇ります 。また、国土交通大臣認定の不燃材(NM-8600)を取得しており(基材として)、防火区画や耐火被覆材としても安心して使用できます。
- 安全な「F☆☆☆☆」等級: 繊維を固めるバインダーに含まれるホルムアルデヒドの発散量が最も少ない**「F☆☆☆☆」等級**に適合しており、建築物内でも使用面積の制限なく安全に使用できます 。
第2部:【選定編】用途で選ぶ!MGベルト®のラインナップ
MGベルト®は、現場の要求仕様に合わせて、主に2つの密度と表面材の有無でラインナップが構成されています。
1. MGベルト 070(密度70kg/m³・裸品)
- JIS規格: 保温帯1号
- 特長: 密度70kg/m³のロックウールを使用し、表面材が付いていない「裸」のタイプです。最も柔軟性に富み、経済的です。
- 主な用途: 空調ダクトや各種配管、タンク類の保温・断熱において、この上からさらに板金(ラッキング)や外装材を施工する場合の「中身」として最適です。
2. MGベルト 070-ALGC(密度70kg/m³・ALGC貼り)
- JIS規格: 保温帯1号
- 特長: 「070」タイプの表面に、ALGC(アルミガラスクロス)を貼り付けた化粧タイプです。
- ALGCのメリット:
- 防湿・防露: アルミ箔層が湿気の侵入を防ぎ、結露対策に効果を発揮します。
- 表面強度向上: ガラスクロスによる補強で、表面が傷つきにくくなります。
- 意匠性: 銀色の仕上がりが美しく、露出した場所での仕上げ材としても機能します。
- 主な用途: ALGCの防湿・美観性能が求められる空調ダクトや配管の保温・断熱。
3. MGベルト 120-ALGC(密度120kg/m³・ALGC貼り)
- JIS規格: 保温帯2号
- 特長: より高密度な120kg/m³のロックウールを使用し、ALGCを貼り付けた高性能タイプです。「070」タイプに比べ、より高い断熱性能(熱伝導率が低い )と吸音性能を発揮します。
- 主な用途: より高い断熱・吸音性能が求められるダクトや配管、機器の保温。
4. その他の特殊用途
- 集合住宅厨房排気ダクトの防火材: MGベルト®の不燃性と施工性の良さは、火災予防条例などで定められる防火区画貫通部の処理や、厨房排気ダクトの防火材としても適しています。
第3部:【重要】取り扱い上の注意事項
MGベルト®は非常に優れた製品ですが、その特性を理解し、正しく安全に使用するための注意点があります。
施工・保管時の必須確認事項
- 粉じん(ダスト)と皮膚刺激: 基材はロックウールです。切断・施工時には微細な繊維が飛散するため、防じんマスクの着用が推奨されます。また、繊維が皮膚に触れると一時的なかゆみを生じることがあるため、長袖の作業衣や保護手袋を着用してください 。
- 初期加熱時の発煙: MGベルト®は、繊維を固めるために有機バインダー(熱硬化性樹脂)を含んでいます。初めて高温(目安として150℃~200℃以上)にさらされる際、このバインダーが熱分解し、一時的に煙や臭気が発生します。これは製品の異常ではありませんが、必ず十分な換気を行ってください 。
- 水濡れ厳禁(特に裸品): 裸品(070タイプ)は撥水処理が施されていません。水に濡れると断熱・吸音性能が著しく低下するため、保管・施工中は水濡れに細心の注意を払い、常温・常湿の屋内で保管してください 。ALGC貼り製品も、端面からの水の浸入には注意が必要です。
最終章:答えはここにある。「選定のご依頼はダイコーへ」
この記事で見てきたように、ニチアスのMGベルト®は、その「繊維垂直構造」により、標準的なボード状断熱材では対応が困難だった「曲面」への断熱・吸音施工を、高い品質と効率で実現する画期的なソリューションです。
しかし、実際の現場では、標準品(幅605mmのロール)だけでは解決できない、さらに複雑な課題が存在します。
「配管のエルボ(曲がり)部分や、T字分岐部に合わせて、MGベルト®を精密な形状にカットしたい」
「タンクの鏡板(半球状のフタ)に隙間なく貼り付けられるよう、MGベルト®を正確な扇形に分割加工してほしい」
「図面(CADデータ)を渡すので、この形状通りにMGベルト®を切り出して、1枚から納品してほしい」
このような、標準品では決して解決できない、現場固有の「加工」の課題。それに対して、50年以上の経験に裏打ちされた専門知識(ノウハウ)と、それを形にする加工技術(ソリューション)の両輪で応えることこそ、工業用製品の加工メーカーである株式会社ダイコーの真価です。
専門家による最適な「選定」
「70kと120k、どちらの密度がコストと性能のバランスで最適か?」「ALGC貼りは本当に必要か?」「150℃を超えるが、水濡れも心配だ」
「選定のご依頼はダイコーへ」とお任せください。ダイコーの専門スタッフが、お客様の使用条件、施工方法、コスト要求までを詳細にヒアリング 。MGベルト®が最適か、あるいはMGマイティカバー®(保温筒) やMGワイヤードブランケット® 、はたまた電食防止用の絶縁材 との組み合わせが必要かなど、メーカーの垣根を越えた最適なソリューションをご提案します。
材質の選定に迷ったとき、標準品では対応できない特殊な加工が必要なとき、あるいはどこに頼めば良いか分からない課題に直面したとき。その答えは、常にここにあります。選定のご依頼はダイコーへ — どうぞ、お気軽にご相談ください。