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導入事例/コラム

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グランドパッキンの性能を100%引き出す!選定から取付・交換までの全知識【徹底解説】株式会社ダイコー

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グランドパッキンの性能を100%引き出す!選定から取付・交換までの全知識【徹底解説】

バルブやポンプといった流体機器の心臓部で、流体の漏れを確実に防ぐ「グランドパッキン」。この小さなシール部品が、プラントの安定稼働、そして安全を支える極めて重要な役割を担っていることは言うまでもありません。しかし、いかに高性能なグランドパッキンであっても、その選定や取り扱い方法を一つ間違えるだけで、性能が著しく低下し、漏洩や機器の損傷といった深刻なトラブルを引き起こす可能性があります。

この記事では、グランドパッキンの性能を最大限に引き出し、安全に使用するための「完全ガイド」をお届けします。設計・選定から保管、取り付け、交換、そして廃棄に至るまで、プロが実践すべき注意点を網羅的に解説します。この記事を最後までお読みいただくことで、グランドパッキンに関するトラブルを未然に防ぎ、お使いの機器の信頼性と寿命を向上させるための確かな知識が身につくはずです。

第1部:グランドパッキンの基本と役割を理解する

まず、グランドパッキンがどのようなもので、なぜ正しい取り扱いが求められるのか、その基本から見ていきましょう。

グランドパッキンとは? ― 機器の隙間を埋める重要なシール材

グランドパッキンとは、バルブの弁棒(ステム)や、ポンプ・攪拌機などの回転機器の軸(シャフト)が、機器本体を貫通する部分に装着されるシール材です。機器内部の流体が外部へ漏れ出すのを防ぐ(軸封=シャフトシール)ために、スタフィングボックスと呼ばれる空間に複数個が詰め込まれて使用されます。グランド押えによって軸方向に締め付けられることで、半径方向に力が働き、ステムやシャフトに密着してシール機能を発揮します。

グランドパッキンの主な種類と構造

グランドパッキンは、使用される機器や条件によって、大きく二つのカテゴリに分類されます。

  • バルブ用パッキン: バルブの弁棒(ステム)からの漏れを封止するために使用されます。開閉操作に伴う往復運動や回転運動に対して、確実なシール性が求められます。
    • 高温・高圧用(膨張黒鉛系): 「グラシール®パッキン」として知られるTOMBO™ No.2200シリーズなどが代表的です。膨張黒鉛をリング状に成形したもので、極低温から高温まで幅広い温度範囲で使用でき、優れた耐薬品性と安定した長期シール性を誇ります。
    • 汎用・耐食用(編組系): PTFE(ふっ素樹脂)繊維やカーボン繊維、アラミド繊維などを角形に編組(ブレード)したパッキンです。PTFEディスパージョンや潤滑剤を含浸させることで、シール性や耐薬品性を高めています。
  • 回転機器用パッキン: ポンプや攪拌機など、常に高速で回転する軸のシールに使用されます。バルブ用と異なり、軸との摩擦熱を冷却し、潤滑性を保持するために、意図的にごく微量の流体を漏らしながら使用するのが原則です。この「漏れ管理」が、回転機器用パッキンの取り扱いにおける最も重要なポイントとなります。

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第2部:【実践編】性能を最大限に引き出す正しい使い方

ここからは、カタログの「取扱説明書」に基づき、グランドパッキンの性能を100%引き出すための具体的な手順と注意点を解説します。

1.【最重要】設計・選定に関する注意事項

すべての基本は、使用条件に最適なパッキンを正しく選ぶことから始まります。

  • 使用条件の適合性確認: 温度、圧力、流体の種類(化学薬品、pH)、そして回転機器の場合は摺動速度(m/s)やPV値(圧力×摺動速度)といった使用条件を正確に把握し、それらの条件に十分耐えうる材質を選定することが不可欠です。不明な点がある場合や新規の用途では、必ずメーカーや専門家に相談し、実機での評価を行うことが推奨されます。
  • 適切なサイズの選定: パッキンの性能は、軸径とスタフィングボックスの隙間に正しくフィットすることで発揮されます。軸径に対して細すぎるパッキンは十分なシール性が得られず、太すぎると挿入時に損傷したり、過大な抵抗を生んだりします。必ずカタログ記載の推奨サイズに従って選定してください。
  • リング数の決定: 必要なパッキンのリング数は、主に使用圧力によって決まります。圧力が高いほど、多くのリング数が必要になります。ニチアスのカタログでは、圧力クラスごとに推奨リング数が示されており、これを基準に選定します。
  • 組み合わせの原則(特にバルブ用): グラシール®モールドパッキン(例: TOMBO No.2205-P)のような高性能パッキンは、単独では使用せず、上下をアダプターパッキン(例: TOMBO No.2250-A)で挟み込む「組み合わせ」で使用するのが基本です。アダプターパッキンがモールドパッキンを保護し、スタフィングボックス内での均一な面圧分布を実現することで、抜群のシール性が得られます。必ず正しい配列で装着してください。

2. 品質を維持する保管のルール

パッキンは、使用するその時まで、最高のコンディションを保つ必要があります。

  • 保管環境: 高温な場所、湿度の高い場所、直射日光が当たる場所はパッキンの劣化を早めます。必ず風通しの良い、屋内の冷暗所で保管してください。
  • 保管状態: 出荷時の梱包のまま保管し、上に物を載せて変形させないでください。また、品番や寸法がわからなくならないよう、ラベルを付けた状態で管理することが重要です。

3. 失敗しない新規取り付けの手順と要点

取り付け作業の品質が、シールの成否を直接左右します。

【徹底】事前確認

  • 機器の状態: ステム(軸)やスタフィングボックス内部に、傷、打痕、錆、汚れ、変形がないかを厳しく確認してください。わずかな傷でも、そこが漏れの起点(リークパス)となります。
  • 異物の排除: パッキンや機器に付着した異物は、シール不良や機器損傷の直接的な原因です。清浄な状態で作業を行ってください。

正しい挿入方法

  • リング成形品の使用: 可能な限り、工場で精密に成形された「リング成形品」を使用してください。これにより、安定した性能が得られます。
  • 挿入の基本: パッキンは1リングずつ、正しい組み合わせ順に挿入します。その際、各リングの切口(合い口)が一直線上に並ばないよう、必ず90°または120°ずつずらして配置してください。
  • グラシール®1カット品の注意: 膨張黒鉛製のリングはデリケートです。ステムに通す際は、半径方向にこじ開けるのではなく、軸方向にねじるようにして開いてください。無理に開くと、層状剥離を起こし破損します。
  • 無理な挿入は厳禁: ハンマーなどで叩き込むようなことは絶対に行わないでください。

【最重要】締め付け管理

  • バルブ用パッキンの場合:
    1. 手締めでナットを締め込んだ後、トルクレンチを用いて規定の締付面圧まで締め付けます。
    2. ボルトが複数ある場合は、必ず対角線上に、数回に分けて均等に締め付け、「片締め」を絶対に避けてください。
    3. 締め付けの合間にステムを数回動かし、パッキンをよくなじませます。
  • 回転機器用パッキンの場合(バルブ用との最大の違い):
    1. 一度グランドを締め付けてパッキンをなじませた後、ナットを緩めます。
    2. その後、「手締め」で軽く締め込んだ状態で機器をスタートさせます。強く締め込んだまま起動すると、摩擦熱で瞬時に焼き付き、パッキンと軸を損傷させます。
    3. ならし運転: 機器を起動させ、漏れ量を確認しながら、ナットを一度に30°以下の回転角で少しずつ締め付け、規定の漏れ量(例: 3~20cc/min)になるよう調整します。漏れが少なすぎると潤滑不足で焼き付くため、「漏れは潤滑」と心得てください。

第3部:トラブルを未然に防ぐ保守・交換のポイント

1. 使用開始後の注意事項

  • 増し締め: 特に高温のバルブでは、運転開始直後に熱による締付力低下が起こるため、増し締めが必要です。運転中に漏れを発見した場合は、放置せずに速やかに増し締めを行ってください。長期間放置すると漏れ癖がつき、増し締めしても止まらなくなります。
  • 交換時期の判断: グランド押えの増し締め代がなくなったら、パッキンの寿命です。速やかに新しいパッキンに交換してください。

2. 安全第一の交換作業

  • 【絶対厳守】圧力の解放: 交換作業前には、必ず機器・配管内の圧力を完全に大気圧まで下げてください。加圧状態でのボルトの緩めは、内部流体の噴出を招き、極めて危険です。
  • 古いパッキンの完全除去: パッキンツールなどを使用し、スタフィングボックスの奥に古いパッキンが一片も残らないよう、完全に取り除いてください。この際、ステムやボックス内面を傷つけないよう、細心の注意を払う必要があります。

3. やむを得ず「ひも状パッキン」を加工する場合

現場での緊急対応など、ひも状パッキンを加工してリングを作る場合は、以下の点を守ってください。

  • 工具と切断長: よく切れる工具を使い、パッキン長さ = (π/2) × (ステム径 + スタフィングボックス内径) × 1.03~1.05 の計算式で求めた正しい長さに切断します。
  • 切口の形状: 切口は、隙間なく突き合わせられるよう、バイアスカット(45°)またはストレートカットにしてください。

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