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TOMBO No.1133ガスケット ニチアス株式会社製|耐薬品性に特化した高機能モデル【選定ガイド】株式会社ダイコー
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TOMBO No.1133ガスケット ニチアス株式会社製|耐薬品性に特化した高機能モデル【選定ガイド】
「酸やアルカリを扱うラインで、信頼性の高いガスケットを選定したい」「ユーティリティー用のガスケットでは、長期的な耐食性に不安が残る」…こうした化学的腐食性が高い環境下でのシール課題に応えるため、ニチアス株式会社が開発したのが、耐薬品性に特化したふっ素樹脂ガスケット「TOMBO™ No.1133」(クリンシルクリーン)です。
この記事では、No.1133がなぜ一般的なガスケットとは一線を画す優れた耐薬品性を発揮できるのか、その構造的な秘密から、性能を裏付ける具体的なデータ、そして安全に使用するための正しい知識まで、専門的な視点から徹底的に解説します。
第1部:No.1133とは?― 「PTFE + アルミナ」が実現する卓越した耐薬品性
No.1133は、カタログにおいて「耐薬品用途」のふっ素樹脂ガスケットとして明確に位置づけられています。その性能の核心は、ベースとなるふっ素樹脂(PTFE)に、化学的に極めて安定した充填材を配合した、独自の材料構成にあります。
性能の核心:化学的に不活性な「アルミナ」の充填
No.1133の優れた耐薬品性は、その主成分に由来します。カタログに記載されている主成分は以下の通りです。
- PTFE(ふっ素樹脂): ベース材として機能。ほとんどの化学薬品に対して侵されない、究極の耐薬品性を持ちます。
- アルミナ: 主な充填材。アルミナ(酸化アルミニウム)は、ファインセラミックスの原料としても知られる、化学的に非常に安定し、硬質な物質です。
PTFE自体が優れた耐薬品性を持っていますが、単体ではクリープ(応力緩和)しやすいという弱点があります。No.1133は、このPTFEに化学的に不活性なアルミナを充填材として配合することで、PTFEの弱点であるクリープ特性を改善しつつ、ガスケット全体の耐薬品性を極めて高いレベルで維持しているのです。
No.1133が実現する4つの卓越した性能
- 広範な腐食性流体への対応力
「酸・アルカリ、石油・石油化学製品、有機溶剤、熱油、熱媒ガス、蒸気など幅広い流体に使用可能」と記載されており、その適応範囲の広さが際立っています。一般的なユーティリティー流体はもちろんのこと、多くの化学プロセスラインで安心して使用できる高い信頼性を持っています。
(※ただし、後述する通り、一部の強酸・強アルカリには使用できないため注意が必要です)
- 優れた耐熱性と低クリープ特性
P-T線図(圧力-温度線図)が示す通り、油系・腐食性流体で最高260℃まで対応可能、水系流体では最高300℃まで対応可能です。これは、充填材入りPTFEガスケットの中でも高いレベルの耐熱性です。また、アルミナ充填材がPTFEの変形を抑制するため、加熱時にもクリープしにくく、長期にわたり安定したシール性能を維持します。
- 信頼性の高い電気絶縁性
主成分であるPTFEとアルミナは、いずれも電気を通しにくい絶縁体です。そのため、No.1133は「電気絶縁性を必要とするところにも使用可能」とカタログに記載されています。異種金属フランジ間の電食(ガルバニック腐食)を防止する目的でも、その効果を発揮します。
- クリーンな白色
ガスケットの色は白色であり、黒鉛などの黒色成分を含んでいません。そのため、流体への黒色異物の混入を嫌うラインでも使用が検討できます。

第2部:No.1133の性能を最大限に引き出すための正しい使い方
No.1133は非常に高性能な耐薬品性ガスケットですが、その性能を100%引き出し、安全を確保するためには、カタログに記載されたいくつかの重要なポイントを守る必要があります。
設計・選定時に注意すべき事項
- ガスケット座の表面仕上げ: 最高のシール性能を得るため、フランジのガスケット座の推奨表面粗さは以下の通りです。
- 液体シールの用途: 6.3μm Ra以下
- ガスシールの用途: 3.2μm Ra以下
適切な表面粗さは、ガスケットの食い込みと滑りのバランスを最適化し、安定したシールを実現するために不可欠です。
- 使用できない流体の厳守: No.1133は広範な薬品に対応できますが、万能ではありません。PTFEベースのガスケットに共通の禁忌流体である「溶融アルカリ金属、高温のふっ素、三ふっ化塩素」には絶対に使用できません。また、カタログには「一部の強アルカリ、強酸を除く」との注記があります。適用可否が不明な特殊な流体や、高濃度の強酸・強アルカリについては、必ず事前にメーカーや専門家への確認が必要です。
使用上注意すべき事項
- ガス系流体で使用する場合: ガスは液体よりも漏れやすいため、より確実なシールを期すために、カタログではTOMBO No.9400(ナフロンペースト)の併用を推奨しています。ペーストをガスケットの両面に薄く均一に塗布することで、初期シール性を高め、微小な漏洩を防ぐ効果が期待できます。
- 200℃を超えるガスラインでの使用: 高温下ではPTFEのクリープ現象が顕著になります。そのため、200℃を超えるガスラインで使用する場合は、クリープによる変形量を抑制するため、ガスケットの厚さは1.5mmを推奨するとカタログに記載されています。
- 締付管理の徹底: カタログに記載されている「最小締付面圧」と「許容締付面圧」の範囲内で、トルクレンチを用いて均一に締め付けることが基本です。特に、許容締付面圧(150N/mm²)は非常に高く設計されていますが、過剰な締め付けはガスケットの寿命を縮めるだけでなく、フランジを傷める原因にもなります。
第3部:特殊形状・複雑な選定はダイコーにご相談ください
ニチアス No.1133は、耐薬品性が求められる多くの場面でファーストチョイスとなり得る、非常に信頼性の高いガスケットです。しかし、化学プラントにおける条件は千差万別であり、時には専門的な判断が求められます。
「使用する薬品の濃度と温度を考えると、本当にNo.1133で長期間問題ないだろうか?」
「ユーティリティー用のNo.1120やNo.1155との、具体的な使い分けの基準は?」
「ガラスライニングされた反応槽のマンホール用に、特殊な形状のNo.1133ガスケットを製作したい」
このような、カタログの標準情報だけでは判断に迷う専門的なケースや、シート材からの精密な加工が必要となる場面では、ぜひ私たちガスケットのプロフェッショナル、ダイコーにご相談ください。
なぜ、複雑な選定・加工はダイコーに任せるべきなのか?
- 専門的な製品選定サポート: 私たちは、ニチアス社のガスケット製品群それぞれの長所と短所、そして適用限界を深く理解しています。お客様の使用条件(流体、濃度、温度、圧力)を詳細にヒアリングし、No.1133が最適か、あるいは他の特殊ガスケット(包みガスケットなど)がより適しているかなど、安全性とコストを両立させた最適なシールソリューションをご提案します。
- 高精度なオーダーメイド加工: 自社工場に最新のカッティングプロッターやウォータージェット加工機を完備。お客様からいただいた図面(CADデータ)を基に、あらゆる複雑な形状のガスケットを、1枚からでも迅速かつ高精度に製作いたします。
- 信頼できる技術パートナーとして: 腐食性流体を扱うラインにおいて、ガスケットの選定ミスはプラントの安全を脅かす重大なリスクです。私たちは単なる販売店ではなく、お客様の課題を共に解決する技術パートナーとして、専門的な知見で皆様のプラント運営をサポートします。
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ガスケット・パッキン・工業用製品の総合カタログ
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