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導入事例/コラム

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ジョイントシートガスケット安全使用ガイド|100℃の壁と現場の鉄則 株式会社ダイコー【徹底解説】

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ジョイントシートガスケット安全使用ガイド|100℃の壁と現場の鉄則【徹底解説】

プラントの安定稼働を支える最も身近なシール材、「ジョイントシートガスケット」。その汎用性とコストパフォーマンスの高さから、水や油、空気といったユーティリティーラインを中心に、あらゆる現場で広く使用されています。しかし、その手軽さの裏には、誤った使い方をすると重大な漏洩事故につながりかねない、材質特有の弱点と厳格なルールが存在します。

この記事で、ジョイントシートを安全に、そして長期にわたり安定して使用するために、現場の誰もが知っておくべき「共通の注意事項」を、専門的な視点から徹底的に解説します。特に、多くのトラブルの原因となる「100℃の壁」に焦点を当て、その対策を深く掘り下げます。

第1部:ジョイントシートの根本的課題 ― なぜ「100℃の壁」が存在するのか?

ジョイントシートに起因するトラブルを理解する上で、まず知らなければならないのが、その材質的な限界、通称「100℃の壁」です。

性能の核心と弱点:ゴムバインダーの熱による硬化

バルカーのNo.6500シリーズをはじめとする一般的なジョイントシートは、アラミド繊維や無機充填材を、NBR(ニトリルゴム)などの「ゴム」をバインダー(結合材)として固めたものです。このゴムが、常温域ではガスケットに柔軟性と高いシール性を与えています。

しかし、カタログには最も重要な警告として、「ゴムを使用したジョイントシートガスケットは、100℃以上で使用すると硬化して割れることがあります」と明確に記載されています。

これは、熱によってゴムバインダーが弾力性を失い、まるでプラスチックのように硬く、脆くなってしまう「熱硬化」という現象が起きるためです。硬化したガスケットは、以下のような致命的な問題を引き起こします。

  • 追従性の喪失: 配管は温度変化によって伸び縮み(熱膨張・収縮)したり、ポンプの振動を受けたりします。柔軟なガスケットはこれに追従できますが、硬化したガスケットは追従できず、微細なひび割れ(マイクロクラック)が発生します。
  • 割れ・欠けの発生: ひび割れが進行すると、最終的にはガスケット自体が割れたり、欠けたりします。これにより完全なシール性能が失われ、流体の漏洩に至ります。

この「100℃の壁」を正しく理解し、適切に対策を講じることが、ジョイントシートを安全に使いこなすための絶対的な前提条件となります。

カタログダウンロードへの誘導バナー

第2部:【現場の鉄則】100℃を超える環境でジョイントシートを安全に使うための5大法則

では、100℃を超える蒸気や熱水ラインでジョイントシートを使うことはできないのでしょうか?答えは「いいえ」です。カタログでは、この「100℃の壁」を乗り越え、安全に使用するための5つの厳格なルールを提示しています。これらは、高温条件下でジョイントシートを使用する際の「現場の鉄則」であり、一つとして欠かすことはできません。

現場の鉄則

  1. 鉄則1:ガスケットの厚さを「1.5mm以下」とする
    厚いガスケット(例:3.0mm)は、熱による硬化が進行した際に、内部に発生する応力が大きくなり、薄いものに比べて格段に割れやすくなります。厚さを1.5mm以下の薄いものに限定することで、硬化による内部応力の影響を最小限に抑え、割れのリスクを大幅に低減させることができます。
  2. 鉄則2:ガスケットペーストを「必ず塗布」する
    ガスケットペースト(シールペースト)をガスケットの両面に薄く均一に塗布します。これは、以下の二つの重要な役割を果たします。
    • 初期なじみの向上: フランジ面の微細な凹凸とガスケットとの隙間を完全に埋め、運転初期のシール性を確実なものにします。
    • シール性能の補助: ガスケットが徐々に硬化していく過程においても、ペースト層がシール性を補助し、微小な漏洩を防ぐ効果が期待できます。
  3. 鉄則3:締付面圧を「30MPa以上」で管理する
    運転開始時の常温状態で、トルクレンチを用いて30MPa以上の十分な締付面圧をかけておくことが極めて重要です。高い初期面圧によって、ガスケットが熱で硬化を始める前に、フランジの座面に深く食い込み、強力で安定したシール面を形成させることができます。この初期の「食い込み」が、後のシール寿命を大きく左右します。
  4. 鉄則4:「リスクの低い箇所」を優先的に選定する
    これは、万が一の事態を想定した、リスク管理の観点からの重要な指示です。
    • 配管応力の負荷がかかりにくい箇所: 配管の熱膨張による応力や、機器の振動が直接伝わるような過酷な場所を避け、比較的応力のかかりにくい箇所に適用します。
    • 取り替えやすい箇所: 万が一、硬化による漏洩が発生した場合でも、交換作業が安全かつ容易に行える箇所に優先的に使用することで、プラント全体の安全性を高めます。
  5. 鉄則5:「リングガスケット」の使用を推奨する
    ガスケットにかかる圧力(面圧)は、「ボルトの締付力 ÷ ガスケットの受圧面積」で決まります。ボルトの内側に収まる「リングガスケット」は、ボルトの外側まで広がる「全面形ガスケット」よりも受圧面積が小さいため、同じボルト締付力でも、より高い面圧を効率的に確保できます。「鉄則3」で求められる30MPa以上の高い面圧を達成するために、リングガスケットの採用が強く推奨されています。

第3部:その他の重要注意事項 ― 設計から施工、メンテナンスまで

100℃以上での使用法に加え、カタログには、ジョイントシートを正しく使用するための様々な注意事項が記載されています。

設計時に注意すべき事項

  • ガスケット座の表面粗さ: フランジのガスケット座の推奨表面粗さは、液体シールで6.3Ra、ガスシールで3.2Raと規定されています。これより粗いとシール不良の原因となり、逆に鏡のように平滑すぎると、締め付け時にガスケットが滑ってしまい「圧縮破壊」を引き起こす原因になるため注意が必要です。

使用上注意すべき事項

  • ガス系流体での使用: ガスは液体に比べて漏れやすいため、ガスケットペーストの塗布、40MPa程度の高い締付面圧、リングガスケットの使用、1.5mm以下の薄いガスケットの使用が求められます。
  • ステンレス鋼フランジでの使用: 水や水溶液を扱うステンレス鋼フランジでは、一般的なガスケットに含まれる塩素イオンが腐食(応力腐食割れ)の原因となることがあります。このリスクを低減するため、可溶性塩素を低減した防食タイプ(No.6500AC, No.6503AC)の使用が推奨されます。
  • 増し締め(リボルティング)の禁止: カタログは「硬化しているジョイントシートを増し締めしないでください」と強く警告しています。硬く脆くなったガスケットを無理に締め付けると、割れや破壊を引き起こすだけです。増し締めは、ゴムの硬化がまだ顕著ではない「加熱運転開始24時間以内」に限定して実施する必要があります。

第4部:特殊形状・複雑な選定はダイコーにご相談ください

これまで見てきたように、ジョイントシートは非常に身近な製品でありながら、その安全な使用には、カタログに記載された数多くのルールを正確に理解し、遵守することが不可欠です。

「150℃の蒸気ラインだが、カタログの5つのルールを守れば本当に大丈夫なのか?」
「ガスケットペーストを塗布する際の、具体的な製品選定や塗布量の目安は?」
「古い設備のカバーフランジ用に、図面から精密なガスケットを製作してほしい」
このような、カタログの標準情報だけでは判断に迷う専門的なケースや、シート材からの精密な加工が必要となる場面では、決して自己判断せず、ぜひ私たちガスケットのプロフェッショナル、ダイコーにご相談ください。

なぜ、複雑な選定・加工はダイコーに任せるべきなのか?

  • 専門的な製品選定サポート: 私たちは、バルカー製品をはじめとする豊富なラインナップの中から、お客様の使用条件を詳細にヒアリングします。カタログの数値を正しく解釈し、ジョイントシートで対応可能か、あるいは膨張黒鉛ガスケットのような、より高性能な製品が必要かなど、安全性とコストを両立させた最適なソリューションをご提案します。
  • 高精度なオーダーメイド加工: 自社工場に最新のカッティングプロッターやウォータージェット加工機を完備。お客様からいただいた図面(CADデータ)を基に、あらゆる複雑な形状のガスケットを、1枚からでも迅速かつ高精度に製作いたします。
  • 信頼できる技術パートナーとして: ガスケットの選定ミスは、プラントの安定稼働を脅かす重大なリスクです。私たちは単なる販売店ではなく、お客様の課題を共に解決する技術パートナーとして、専門的な知見で皆様のプラント運営をサポートします。

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