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フランジとは?種類・規格からガスケット選定までプロが徹底解説 株式会社ダイコー【基本ガイド】

フランジとは?種類・規格からガスケット選定までプロが徹底解説【基本ガイド】
「配管からの漏洩が止まらない」「どのフランジやガスケットを選べば良いか分からない」「コストと安全性のバランスに悩んでいる」
工場やプラント、社会インフラを支える配管設備。その安定稼働の鍵を握るのが、配管同士や機器を接続する「フランジ」です。一見単純な部品に見えますが、その選定を誤ると、生産停止や環境汚染、さらには重大な事故に繋がりかねません。
この記事では、配管設備の設計・保全に携わる技術者から購買担当者まで、すべての方に向けて、フランジの基礎知識から実践的な選定ポイントまでを網羅的に解説します。種類や規格の違い、シール性能を左右する座面形状、そして最も重要な「ガスケット」の選定方法まで、この記事を読めば全てが分かります。
フランジ継手の基本構造:3つの要素で成り立つ「シールシステム」
フランジによる接続(フランジ継手)は、単一の部品ではなく、3つの主要な構成要素が一体となって機能する「システム」です。この3つの要素の関係性を理解することが、確実なシールを実現するための第一歩となります。
1. フランジ本体 (Flange Body)
配管から伝わる圧力や温度、振動といった様々な応力を受け止め、締結力をガスケット面に均一に伝達する「土台」です 。材質は炭素鋼やステンレス鋼が一般的ですが、流体や環境に応じて銅合金やプラスチックなども用いられます 。
2. ボルトとナット (Bolts and Nuts)
対になった2枚のフランジを引き寄せ、ガスケットを圧縮するための「力」を生み出す重要な部品です。適切なトルク管理が不可欠で、締付力が不足すれば漏洩の原因となり、過剰であればガスケットやフランジの破損を招きます。
3. ガスケット (Gasket)
フランジの接合面の間に挟み込まれ、ボルトの締付力によって圧縮されることで、金属面同士の微細な隙間を埋めるシール材です。フランジ継手の「心臓部」とも言える最重要部品であり、その性能が継手全体の信頼性を直接的に決定づけます。
【接続方法別】フランジの主要5種類を徹底比較!用途とメリット・デメリット
フランジは、配管とどのように接続されるかによって、いくつかの種類に分類されます。コスト、施工性、求められる信頼性に応じて最適なものを選びましょう。
種類 (略号) | 接続方法 | 主な特徴と適した用途 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|---|
差込み溶接式 (SO) | 管を差し込み内外2箇所を溶接 | 最も一般的でコストバランスが良い。一般的な水、油、空気、蒸気配管に最適。 | 位置合わせが容易、比較的安価。 | 溶接ネック式に比べると強度は劣る。 |
溶接ネック (WN) | 管端と突合せ溶接 | 長いネックで応力を緩和し、極めて高い強度を持つ。高温・高圧・極低温など過酷な条件に最適 。 | 最も信頼性が高い、疲労に強い。 | コストが高い、高度な溶接技術が必要。 |
ソケット溶接式 (SW) | ソケットに管を差し込み外面を溶接 | 差込み溶接式より疲労強度が高い 。小口径・高圧配管や省スペースが求められる箇所に適する。 | 比較的コンパクトに施工可能。 | 構造上、腐食性流体には不向きな場合がある。 |
ねじ込み式 (TR) | ねじ込みによる接合 | 溶接が不要。火気厳禁の場所や、低圧・小径配管、メンテナンス頻度が高い箇所に 。 | 施工が容易、安価、メンテナンス性が良い。 | 漏洩リスクが高く、高圧ガス等には使用制限がある 。 |
遊合形 (LJ) | スタブエンドと組み合わせる | フランジが回転可能でボルト穴合わせが非常に容易。頻繁な分解・組立箇所や、異種金属配管に。 | 作業性が良い、コスト削減が可能。 | スタブエンドが別途必要。 |
【座面形状別】シール性能を決定づけるフランジの「顔」
フランジのシール性能は、ガスケットと直接接触する「座面(ガスケット面)」の形状に大きく左右されます。締付力をいかに効率よくガスケットに伝えるかがポイントです。
全面座 (Flat Face, FF)
フランジの接合面全体が平坦な形状です。締付力が広い面積に分散されるため、ガスケットにかかる面圧は低くなります。漏洩しても危険性の低い水や空気など、低圧の流体で主に使用されます 。
平面座 (Raised Face, RF)
ガスケットが接触する部分が一段高くなっている、最も標準的な形状です。接触面積を意図的に狭めることで、同じ締付力でもガスケットにかかる面圧を効果的に高め、高いシール性を実現します。汎用性と信頼性の高さから、プラント配管で最も広く利用されています。
溝形 (Tongue and Groove, TG)
一方に凸状の突起(タング)、もう一方に凹状の溝(グルーブ)を設け、嵌合させる構造です。ガスケットを機械的に拘束し、極めて高い面圧を確保できるため、非常に高い気密性が得られます。可燃性ガスや毒性ガスといった危険性の高い流体や、真空配管などで採用されます。
フランジ規格の解読:JIS・JPI・ASME(ANSI)の違いと互換性
フランジは互換性を確保するために厳格な工業規格に基づいて製造されています。特に国内のプラントでは主に3つの規格が使用されており、これらの違いを理解しないと、部品手配ミスなどの重大なトラブルに繋がります。
規格 | 正式名称 | 圧力表記 | 主な使用分野 | 特徴 |
---|---|---|---|---|
JIS | 日本産業規格 | 10K, 20K など | 国内の一般工場、建築設備 | 日本国内で最も普及している国家規格。 |
JPI / ASME(ANSI) | 日本石油学会 / 米国機械学会 | Class 150, 300 など | 石油化学プラント、発電所など | ASMEが事実上の国際標準。JPIはASMEを基に制定 。 |
【重要】規格間の互換性はありません!
JISとJPI/ASMEでは、同じような圧力帯(例:JIS 10KとClass 150)でも、フランジの外径やボルト穴の数・ピッチ(PCD)が異なるため、物理的に接続することはできません。また、ASME規格ではガスケット座面にセレーション(渦巻き状の溝)加工が要求されるのが一般的ですが、JPI規格では通常施されない、といった細かな違いもあります。メンテナンスや部品交換の際は、必ず既存設備の規格を正確に確認してください。
【最重要】シール性能の9割を決める「ガスケット」の選び方
どれだけ高価で高性能なフランジを使用しても、その間に挟むガスケットの選定を間違えれば、漏洩は防げません。ガスケットの選定は「流体の種類」「温度」「圧力」という3大要素に加え、フランジの状態など多くの要因を複合的に考慮する必要がある、非常に専門的な領域です。
ガスケット選定で考慮すべき4大要素
- 流体の種類:水、油、蒸気、腐食性の高い化学薬品など、流体への耐性(耐薬品性、耐油性)が最も重要です。
- 温度:極低温(-270℃)から高温(450℃以上)まで、使用温度範囲に適した材質でなければ、ガスケットはすぐに劣化します。
- 圧力:内部流体の圧力に耐え、吹き抜けない(ブローアウトしない)機械的強度が必要です。
- フランジの状態:長年の使用による歪みや傷、腐食がある場合、その隙間を埋めるために、あえて柔軟性の高い厚手のガスケットを選定する必要があります。
ガスケットの主要な種類と用途
これらの条件に対応するため、ガスケットには多種多様な種類が存在します。
分類 | 代表例 | 特徴と主な用途 |
---|---|---|
非金属ガスケット | ジョイントシート、ゴム、PTFE(ふっ素樹脂)、膨張黒鉛 | 柔軟性に富み、比較的低い締付力でシール可能。主に低温・低圧の汎用的な用途で活躍。耐薬品性に優れるPTFEは医薬品や半導体分野でも使用されます。 |
セミメタリックガスケット | うず巻形ガスケット | 金属の強度・耐熱性と非金属のシール性を融合。温度・圧力の変動に強く、高温・高圧のプラント設備で最も標準的に使用される信頼性の高いガスケット 。 |
メタルガスケット | リングジョイント | 金属材料のみで構成。超高温・超高圧といった、他のガスケットでは対応できない極めて過酷な条件下で使用される。 |
専門家による最適な選択を:ガスケットの選定はダイコーへ
ガスケットの選定は、多様な要因が複雑に絡み合う専門領域です。一つ間違えれば重大なトラブルに繋がりかねません。そんな時は、50年の歴史と実績を持つガスケット・パッキンの総合メーカー、株式会社ダイコーにご相談ください。
ダイコーが選ばれる3つの理由
- 圧倒的な製品ラインナップと提案力
水・蒸気ライン用の汎用的なノンアスジョイントシートから、高温・高圧用のうず巻形ガスケット、耐薬品性に優れたフッ素樹脂系まで、あらゆる用途に対応する製品を網羅。バルカーやニチアスといった主要メーカー品も取り扱い、中立的な視点からお客様の課題に最適な製品を提案します 。 - あらゆる規格への対応力
国内標準のJIS規格はもちろん、石油化学プラントで必須のJPI/ASME規格、さらにドイツ製など輸入機器に不可欠なDIN規格にも完全対応 。規格の違いで部品調達にお困りの際も、ダイコーならワンストップで解決します。 - 業界屈指の加工技術と短納期対応
日本最大級のウォータージェット加工機(最大4000mm×5500mm)を駆使し、規格品では対応できない大口径や特殊形状のガスケットを、図面一枚から高精度かつ短納期で製作。豊富な在庫と長年の技術で、突発的なトラブルによる緊急の部品要求にも迅速に対応し、お客様のダウンタイムを最小限に抑えます。
「どのガスケットを選べば良いか分からない」「既存設備の漏れが止まらない」「特殊な条件に合うガスケットを探している」。そんな時は、まず専門家であるダイコーにご相談ください。材質選定から加工提案まで、豊富な知識と経験でお客様の課題解決をトータルでサポートします。
まとめ:適切なフランジとガスケット選定で、安全かつ高効率な配管設備を実現
この記事では、配管設備の根幹をなすフランジについて、基本構造から種類、規格、そしてシール性能の鍵を握るガスケットの選定まで、網羅的に解説しました。
重要なのは、フランジ継手の性能と安全性は、フランジ本体だけでなく、その仕様や使用条件に完全に適合した最適なガスケットを選定して初めて保証されるという事実です。フランジとガスケットは「一心同体」の存在であり、常に一つのシステムとして捉える必要があります。
もしフランジやガスケットの選定に少しでも迷いや不安を感じたなら、憶測で判断せず、株式会社ダイコーのような専門メーカーに相談すること。それが、設備の安定稼働を守り、予期せぬトラブルを防ぎ、トータルコストの削減と安全確保に繋がる最も賢明な選択です。
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ガスケット・パッキン・工業用製品の総合カタログ
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