記事公開日
最終更新日
MGハッスイボード® ニチアス製 徹底ガイド|屋外断熱の天敵「水」を克服する高性能断熱材と、150℃という重要な注意点 株式会社ダイコー
-
-

MGハッスイボード® ニチアス製 徹底ガイド|屋外断熱の天敵「水」を克服する高性能断熱材と、150℃という重要な注意点
「屋外に設置されたタンクや配管が、雨水や結露で濡れてしまい、断熱性能が著しく低下している」
「防音壁を設置したいが、雨による吸音性能の劣化が心配だ」
「断熱材が水分を吸い込み、カビや腐食の原因になっていないか不安だ」…。
プラント、工場、ビル建築において、断熱材の最大の天敵は「水」です。ロックウールやグラスウールといった繊維系断熱材は、一度その空気層が水に置き換わってしまうと、熱伝導率が急激に上昇し、断熱材としての機能はほぼ失われてしまいます。
この、屋外・湿潤環境における根本的な課題を解決するために、ニチアス株式会社が開発したのが、「MGハッスイボード®」です。これは、ニチアスが誇る高性能ロックウール断熱材「MGボード®」の優れた基本性能はそのままに、強力な「撥水(はっすい)性能」を付加した高機能製品です。
この記事では、ニチアス株式会社の公式製品カタログに基づき、MGハッスイボード®がなぜ屋外設備や湿潤環境の断熱・吸音ソリューションとして選ばれるのか、その性能の核心から、選定時に絶対に知っておくべき「150℃」という重要な温度限界まで、徹底的に解説します。

第1部:MGハッスイボード®とは?— 高性能断熱・吸音材「MGボード」への「撥水」という付加価値
MGハッスイボード®を理解するために、まずはその基材となっているニチアスのスタンダード製品「MGボード®」の基本性能を理解する必要があります。
1-1. 基材「MGボード®」の卓越した基本性能
MGボード®は、ロックウール(人造鉱物繊維)を板状に成形した製品です。微細な繊維が複雑に絡み合い、内部に無数の動かない空気層を保持することで、以下の優れた特性を発揮します。
- 優れた「保温・断熱性」: 内部の微細な空気層が熱の伝達を効果的に遮断し、省エネルギー効果に貢献します 。
- 優れた「吸音性」: 音のエネルギーを繊維との摩擦によって熱エネルギーに変換し、減衰させます 。
- 優れた「耐熱性・不燃性」: 熱間収縮温度は600℃以上を誇り、国土交通大臣認定の不燃材(NM-8600)でもあります 。
- 高い「安全性」: ホルムアルデヒドの発散量が最も少ない「F☆☆☆☆」等級に適合しています 。
1-2. 性能の核心:MGハッスイボード®の「撥水(はっすい)性能」
MGハッスイボード®は、この高性能な「MGボード 080」(密度80kg/m³)をベースに、製造プロセスで特殊な撥水処理を施した製品です 。
この処理により、製品は水をはじく高い撥水性を獲得します 。標準のMGボード®が水分を吸収しやすいスポンジ状の特性を持つのに対し、MGハッスイボード®は、表面や内部に水が浸入することに対して高い抵抗力を発揮します 。
これにより、屋外タンクや配管、結露が発生しやすい箇所の防音壁など、水分との接触が避けられない環境下でも、断熱・吸音性能の著しい低下を防ぎ、長期間にわたって安定した性能を維持することが可能になります。
第2部:【最重要】性能を100%引き出すための正しい選定と、150℃の温度限界
MGハッスイボード®は、屋外・湿潤環境において非常に強力なソリューションですが、その選定と使用にあたっては、絶対に守らなければならない重要な制約が存在します。
2-1. 最適な用途 — 水分が懸念される中低温域
MGハッスイボード®の主な用途は、その特性が最大限に活かされる以下の環境です。
- プラント、重油タンクなどの屋外設備の断熱・保温
- 屋外に面した防音壁などの吸音材
- その他、結露が発生しやすい箇所の断熱・吸音
2-2. 致命的な弱点 —「150℃の壁」
MGハッスイボード®を選定する上で、最も重要かつ厳守すべき注意点。それは「温度」です。
「※撥水性能は150℃以上の雰囲気では劣化していきますので、そのような環境下では使用しないでください。」
これは、ニチアスの公式カタログに明確に記載されている警告です。基材であるロックウールの耐熱限界(600℃以上)とは全く別の問題です。撥水性能を付与している特殊な処理剤が、150℃以上の熱に晒され続けると、その効果を失ってしまう(=撥水しなくなる)ことを意味します。
【選定の鉄則】
- NG例: 表面温度が180℃になる屋外蒸気配管に、「屋外だから」という理由でMGハッスイボード®を選定する。
→ 間違いです。 撥水性能が失われ、雨水を吸い込み、断熱性能を失います。
- OK例: 表面温度が80℃の屋外冷水タンクの結露防止・保温に使用する。
→ 最適です。 150℃以下のため撥水性能は維持され、断熱性能を長期間維持します。
したがって、MGハッスイボード®は、「屋外・湿潤環境」かつ「使用温度が常に150℃未満」という、2つの条件を同時に満たす場合にのみ、その真価を発揮する特殊な製品であると正しく理解する必要があります。
最終章:答えはここにある。「選定のご依頼はダイコーへ」
MGハッスイボード®は、その優れた撥水性により、屋外や湿潤環境という特定の条件下で大きなメリットを提供します。しかし、その選定は「150℃の壁」という重要な制約を理解した上で、慎重に行わなければなりません。
「MGハッスイボード®の150℃という制限が自社の設備でクリアできるか、専門家に相談したい」
「150℃を超える屋外設備だが、水濡れ対策と断熱を両立する、別の良い方法はないか?」
「ステンレス製のタンクだが、断熱材を固定する際に電食(異種金属接触腐食)の懸念はないか?」
「タンクのフタ(鏡板)に合わせて、MGハッスイボード®を精密に加工・納品してほしい」
このような、カタログのスペック表だけでは決して答えの出ない、「選定」と「加工」が複雑に絡み合う課題。それに対して、50年以上の経験に裏打ちされた専門知識(ノウハウ)と、それを形にする加工技術(ソリューション)の両輪で応えることこそ、工業用製品の加工メーカーである株式会社ダイコーの真価です。
専門家による最適な「選定」と「加工」ソリューション
「選定のご依頼はダイコーへ」とお任せください。ダイコーの専門スタッフが、お客様の使用条件を詳細にヒアリングし、メーカーの垣根を越えた最適なご提案が可能です。
- 150℃以下の屋外設備: MGハッスイボード®の採用を推奨します。
- 150℃以上の屋外設備: MGハッスイボード®は使用できません。代わりに、高温対応の標準MGボード®やMGワイヤードブランケット® を選定し、その外側を金属製の板金(ラッキング)で覆う、といったトータルソリューションをご提案します。
- 電食が懸念される箇所: ステンレス設備への施工時に懸念される電食リスクに対し、豊富な絶縁材(絶縁ワッシャー、スリーブなど) と組み合わせた設計も可能です。
材質の選定に迷ったとき、標準品では対応できない特殊な加工が必要なとき、あるいはどこに頼めば良いか分からない課題に直面したとき。その答えは、常にここにあります。選定のご依頼はダイコーへ 。
製品に関するお問い合わせ
製品に関するお問い合わせ、ご購入や加工のお見積り・納期については、こちらよりお気軽にご相談ください。
ガスケット・パッキン・工業用製品の総合カタログ
ダイコー総合カタログ
このカタログは、ガスケット・パッキンをはじめとした工業製品を幅広く取り扱う株式会社ダイコーの製品情報を詳しく掲載した総合カタログです。
-
-