バルカーNo.7020ガスケット選定ガイド|耐薬品ラインの信頼性を高める標準モデル 株式会社ダイコー
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バルカーNo.7020ガスケット選定ガイド|耐薬品ラインの信頼性を高める標準モデル
「純粋なPTFEガスケットでは、熱による変形(クリープ)が大きくて不安だ」「様々な化学薬品を扱うラインで、バランスの取れた性能を持つ信頼性の高いガスケットを選びたい」…こうした、耐薬品性と機械的安定性の両立が求められる現場のニーズに応える、充填材入りふっ素樹脂ガスケットのスタンダードモデルが、株式会社バルカーの「バルカー No.7020」(バルカロンガスケット)です。
この記事では、No.7020がなぜ多くの化学薬品ラインで汎用的に選ばれるのか、その構造的な秘密から、性能を裏付ける具体的なデータ、そして安全に使用するための正しい知識まで、専門的な視点から徹底的に解説します。
第1部:No.7020とは?― 「PTFE + シリカ」が実現する、バランスの取れた高性能
No.7020は、カタログにおいて「ふっ素樹脂シートガスケット」に分類され、純粋なPTFEの弱点を克服するために開発された、充填材入りタイプの代表的な製品です。その性能の核心は、ベースとなるPTFEに、機械的特性と耐薬品性を向上させる無機質充填材を配合した、独自の材料構成にあります。
性能の核心:クリープを抑制する「シリカ」の充填
No.7020の安定した性能は、その主成分に由来します。カタログに記載されている主成分は以下の通りです。
- PTFE(ふっ素樹脂): ベース材として機能。ほとんどの化学薬品に対して侵されない、究極の耐薬品性を持ちます。
- シリカ: 主な充填材。PTFEに無機質充填材であるシリカを配合することで、PTFE単体(No.7010など)の最大の弱点であったクリープ(応力緩和)現象を大幅に改善します。
純粋なPTFEは、締付力を加えた状態や熱がかかった状態で、時間と共に徐々に変形し、締付力が低下してしまう性質があります。No.7020は、このPTFEの分子構造の間にシリカ粒子を組み込むことで、変形を物理的に抑制し、ガスケット全体の寸法安定性を高めているのです。
No.7020が実現する4つの卓越した性能
- 優れた耐クリープ性と長期安定性
カタログには「耐熱・耐薬品・耐クリープ性を兼ね備えており、各種化学薬品を取り扱うラインのガスケットとして最適です」と記載されています。その裏付けとなるのが「応力緩和率」のデータです。純粋なPTFEであるNo.7010-EX(3.0t)が100℃で63.7%もの応力緩和を示すのに対し、No.7020(3.0t)は55.0%と、明らかに低い値を示しています。この差が、高温下での緩みにくさ、すなわち長期的なシールの信頼性に直結します。
- 広範な化学薬品への対応力
ベースであるPTFEの特性を活かし、多くの酸、溶剤、油など、広範な化学薬品に対して優れた耐性を示します。これにより、様々な流体を扱う化学プラントにおいて、汎用的な耐薬品ガスケットとして安心して使用することができます。
- 信頼性の高い電気絶縁性
主成分であるPTFEとシリカは、いずれも電気を通しにくい絶縁体です。そのため、カタログには「絶縁用途にも使用可能です」と記載されています。異種金属フランジ間で発生する電食(ガルバニック腐食)を防止する目的でも、その効果を発揮します。
- 食品衛生法への適合
カタログには「食」のマークが付記されており、食品衛生法の「容器・包装、器具の規格基準」に適合していることが示されています。これにより、食品や医薬品に直接・間接的に接触する可能性のあるクリーンなラインでも、使用が可能です。

第2部:No.7020の性能を最大限に引き出すための正しい使い方
No.7020は非常にバランスの取れた高性能ガスケットですが、その性能を100%引き出し、安全を確保するためには、材料の特性に由来する「限界」を正確に理解することが不可欠です。
【最重要】使用できない流体の厳守:強アルカリとふっ酸
No.7020を選定する上で、最も重要な注意点です。カタログには、不適な流体として「水酸化ナトリウムなどの高濃度のアルカリ、ふっ酸」が明確に挙げられています。これは、充填材であるシリカが、これらの薬品によって化学的に侵され、溶解してしまうためです。このルールを無視して使用すると、ガスケットの充填材が失われ、構造が脆くなり、最終的には重大な漏洩事故を引き起こします。
強アルカリラインには… カーボンを充填したNo.7026(ブラックバルカロン)
ふっ酸ラインには… 特殊なガスケット(うず巻形など)の検討
というように、明確な使い分けが必要です。
設計・使用上の注意点
- ガスケット座の表面仕上げ: 最高のシール性能を得るため、フランジのガスケット座の推奨表面粗さは、以下の通りです。
- 液体シールの用途: 6.3Ra
- ガスシールの用途: 3.2Ra
過剰に平滑な仕上げは、締め付け時の滑りを誘発し、圧縮破壊の原因となるため避けるべきです。
- 増し締めによる締付管理: No.7020は、ゴム系ジョイントシートのように熱で硬化はしませんが、PTFEの特性として時間と共に変形(クリープ)します。そのため、カタログでは「定期的な増締めを実施するなど、締付管理ができる箇所に使用してください」と推奨しています。さらに、「増締めは高温時、常温時にかかわらず、低下した締付力の回復に効果があります」と記載されており、運転中でも状況に応じて増し締めが可能であることが示唆されています。ただし、高温下ではガスケットやボルトの強度が低下するため、過剰な締め付けには細心の注意が必要です。
- ガスケットペーストの使用: カタログには「基本的には必要ありませんが、使用する場合にはニューバルフロンペーストを薄く均一に塗布してください」と記載されています。特にガスシール用途で、より万全を期したい場合に有効です。
- 加工後の寸法変化: PTFE系シートの特性として、加工後に若干の寸法変化が生じることがあると注意喚起されています。精密な寸法が求められる場合は、その特性を考慮した設計・取り扱いが必要です。
第3部:特殊形状・複雑な選定はダイコーにご相談ください
バルカー No.7020は、多くの耐薬品ラインにおける「第一選択」となり得る、非常に信頼性の高いスタンダードモデルです。しかし、化学プラントの現実は、カタログの標準情報だけでは判断できない複雑なケースに満ちています。
「使用するアルカリの濃度は5%だが、これは'高濃度'に該当するのか?No.7020は使えるのか?」
「酸と溶剤の混合流体に対して、長期的な安定性はどの程度期待できるか?」
「No.7020と、より高性能なMF300やUF300。コストと性能のバランスを考えると、どちらが最適か?」
「特殊な形状の熱交換器用に、No.7020のシートから精密なガスケットを製作したい」
このような、カタログの行間を読み解く専門的な知見や、シート材からの精密な加工が必要となる場面では、ぜひ私たちガスケットのプロフェッショナル、ダイコーにご相談ください。
なぜ、複雑な選定・加工はダイコーに任せるべきなのか?
- 専門的な製品選定サポート: 私たちは、バルカーのふっ素樹脂ガスケットシリーズ(No.7020, 7026など)それぞれの長所と明確な適用限界を深く理解しています。お客様の流体組成、濃度、温度、圧力といった詳細な条件をヒアリングし、最も安全で長期的に信頼できるシールソリューションをご提案します。
- 高精度なオーダーメイド加工: 自社工場に最新のカッティングプロッターやウォータージェット加工機を完備。お客様からいただいた図面(CADデータ)を基に、あらゆる複雑な形状のガスケットを、1枚からでも迅速かつ高精度に製作いたします。
- 信頼できる技術パートナーとして: 腐食性の高い流体を扱うラインにおいて、ガスケットの選定ミスはプラントの安全を根底から揺るがす重大なリスクです。私たちは単なる販売店ではなく、お客様の課題を共に解決する技術パートナーとして、専門的な知見で皆様のプラント運営をサポートします。
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