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バルカーNo.SF300ガスケット選定ガイド|クリーン性と絶縁性を両立した高機能モデル 株式会社ダイコー【徹底解説】
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バルカーNo.SF300ガスケット選定ガイド|クリーン性と絶縁性を両立した高機能モデル【徹底解説】
「流体への黒色異物の混入は絶対に避けたい」「異種金属フランジ間の電食を防止したい」…プラントの安定稼働においては、基本的なシール性能に加え、このような付加価値が求められる場面が数多く存在します。従来のジョイントシートの耐熱性の課題を克服し、さらに「クリーン性」と「絶縁性」という二つの重要な特性を兼ね備えた製品が、株式会社バルカーの高機能シートガスケット「バルカー No. SF300」(ホワイトハイパー)です。
この記事では、SF300がなぜクリーンなラインや絶縁性が求められる箇所で選ばれるのか、その性能の秘密を標準タイプGF300との比較から徹底的に分析。さらに、その高性能を安全に引き出すための正しい知識まで、専門的な視点から深く解説します。
第1部:SF300とは?― 「PTFEバインダー」技術に「クリーン性」をプラス
SF300は、カタログにおいて「高機能シートガスケット」シリーズの一つと位置づけられています。その性能の核心は、標準タイプGF300と共通の革新的な材料構成に、クリーン性を実現するための独自の工夫を加えた点にあります。
性能の核心:黒鉛を排した「PTFE + シリカ」構成
SF300もGF300と同様に、従来のジョイントシートが抱えていた「ゴムの熱による硬化劣化」という根本的な弱点を、バインダーを「PTFE(ふっ素樹脂)」に転換することで克服しています。
GF300との決定的な違いは、充填材の構成にあります。カタログに記載されているSF300の主成分は以下の通りです。
- PTFE(ふっ素樹脂): バインダーとして機能。優れた耐熱性・耐薬品性を持ち、熱による硬化劣化がありません。
- シリカ: 主な充填材。GF300に配合されていた黒鉛(グラファイト)を含んでいません。
この「脱・黒鉛」と、主充填材としての「シリカ」の採用こそが、SF300に「白色・クリーン性」と「電気絶縁性」という、GF300にはない独自の価値を与えているのです。
SF300が実現する4つの卓越した性能
- 優れたクリーン性と食品衛生法適合
黒色の主成分である黒鉛を含まないため、ガスケットの色は白色(ホワイト)です。これにより、ガスケットの摩耗粉などが流体に混入した場合でも、黒色汚染のリスクがありません。この特性から、流体への異物混入を極端に嫌う医薬品、食品、ファインケミカル、電子材料などの製造ラインに最適です。
さらに、カタログには「食」のマークが付記されており、食品衛生法の「容器・包装、器具の規格基準」に適合していることが示されています。これにより、食品に直接・間接的に接触する可能性のあるラインでも、安心して使用することができます。
- 信頼性の高い電気絶縁性
主成分であるPTFEとシリカは、いずれも優れた電気絶縁体です。そのため、SF300はガスケット自体が電気を通しません。これは、異種金属(例えばステンレス鋼フランジと炭素鋼フランジ)を接続する際に特に重要となります。異種金属が電解質溶液(水など)を介して接触すると、電池が形成され、卑な金属(イオン化傾向の大きい金属)が腐食する「電食(ガルバニック腐食)」が発生します。SF300を間に挟むことで、フランジ間を電気的に絶縁し、この電食を効果的に防止することができます。
- 優れた高温安定性(クリープ特性)
SF300は、PTFEバインダー技術により、従来のゴム系ジョイントシートを圧倒する優れたクリープ(応力緩和)特性を持っています。カタログの応力緩和率データ(200℃、22時間後、1.5t)を見ると、No.6502(ゴム系耐熱強化品)の41.1%に対し、SF300は40.5%と、高温下で同等以上の優れた性能を示します。これにより、熱による緩みが発生しにくく、長期にわたり安定したシールを維持できます。
- 熱による硬化劣化がなく「増し締め可能」
GF300と同様、ゴムを含まないため、100℃以上の高温に長時間さらされても硬く脆くなることがありません。これにより、運転後の増し締め(リボルティング)が可能となり、メンテナンスの自由度とプラントの安全性が大幅に向上します。

第2部:SF300の性能を最大限に引き出すための正しい使い方
SF300はクリーン性と絶縁性という付加価値を持つ高性能ガスケットですが、その基本性能を100%引き出すためには、カタログに記載された共通の注意事項を守る必要があります。
設計時に注意すべき事項
- ガスケット座の表面仕上げ: 最高のシール性能を得るため、フランジのガスケット座の推奨表面粗さは以下の通りです。
- 液体シールの用途: 6.3Ra
- ガスシールの用途: 3.2Ra
注意点として、過剰に平滑な仕上げ(鏡面など)にすると、締め付け時にガスケットが滑り、圧縮破壊の原因になる可能性があるため、適切な粗さを保つことが重要です。
使用上注意すべき事項
- ガス系流体で使用する場合: ガスは液体よりも漏れやすいため、より確実なシールを期すために以下の対策が推奨されています。
- ガスケットペーストの塗布: ガスケット表面および内径端面に、薄く均一に塗布することが望ましいとされています。
- 高い締付面圧の確保: 35MPa程度の締付面圧を目標とします。
- リングガスケットの使用: 高い締付面圧を効率的に確保するため、全面形ではなくリングガスケットの使用が推奨されます。
- 薄いガスケットの選定: 厚さ1.5mm以下の薄いガスケットを使用することで、浸透漏れのリスクを低減できます。
- ガスケットペーストの選定: カタログでは、高機能シートガスケットにペーストを使用する際は「ニューバルフロンペースト」を推奨しています。他社製品や特定のペースト(No.6, No.6Mなど)は、馴染みが悪いため推奨されていません。特にクリーンなラインでは、ペースト成分が流体に影響を与えないか、別途確認が必要です。
- 絶縁用途での注意点: SF300本体は絶縁性を持ちますが、フランジを完全に絶縁するためには、締結ボルトとフランジが接触しないようにする必要があります。そのため、ボルト用の絶縁スリーブや、ナット・ワッシャー下の絶縁ワッシャーを併用することが一般的です。完全な絶縁が必要な場合は、専門家への相談が不可欠です。
- 増し締めについて: SF300は増し締めが可能ですが、プラントの安全手順として、高温状態での作業(ホットボルティング)は高いリスクを伴います。最も安全で確実な方法は、必ず常温まで冷却してから増し締めを実施することです。
第3部:特殊形状・複雑な選定はダイコーにご相談ください
バルカー No. SF300は、標準的な高機能シートGF300の優れた基本性能に、「クリーン性」と「絶縁性」という明確な価値を付加した製品です。しかし、その選定には、より専門的な知見が求められる場面も少なくありません。
「GF300とSF300、性能データは似ているが、コストと要求品質を天秤にかけた場合、どちらが最適か?」
「異種金属フランジの電食対策として、SF300と絶縁ボルト・ワッシャーを組み合わせた最適な仕様を提案してほしい」
「食品製造ラインのサニタリー配管用に、特殊な形状のSF300ガスケットを製作したい」
このような、カタログの標準情報だけでは判断に迷う専門的なケースや、シート材からの精密な加工が必要となる場面では、ぜひ私たちガスケットのプロフェッショナル、ダイコーにご相談ください。
なぜ、複雑な選定・加工はダイコーに任せるべきなのか?
- 専門的な製品選定サポート: 私たちは、バルカーの高機能シートガスケットシリーズそれぞれの長所と短所を深く理解しています。お客様の要求(クリーン度、絶縁の要否、流体、温度、圧力)を詳細にヒアリングし、SF300が最適か、あるいは他の製品がより適しているかなど、安全性とコストを両立させた最適なシールソリューションをご提案します。
- 高精度なオーダーメイド加工: 自社工場に最新のカッティングプロッターやウォータージェット加工機を完備。お客様からいただいた図面(CADデータ)を基に、あらゆる複雑な形状のガスケットを、1枚からでも迅速かつ高精度に製作いたします。
- 信頼できる技術パートナーとして: ガスケットの選定ミスは、製品の品質汚染や設備の腐食といった重大な問題に直結します。私たちは単なる販売店ではなく、お客様の課題を共に解決する技術パートナーとして、専門的な知見で皆様のプラント運営をサポートします。
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