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フランジの電食(異種金属接触腐食)とは?原因と絶縁対策を解説

フランジの電食(異種金属接触腐食)とは?原因と絶縁対策を解説
配管フランジのメンテナンスにおいて、「電食」は設備の寿命を縮め、重大な漏洩事故を引き起こす可能性のある深刻な問題です。特に、異なる種類の金属を組み合わせた配管ラインでは注意が必要です。このページでは、電食が発生するメカニズムと、それを防ぐための最も効果的な「絶縁」対策について詳しく解説します。
フランジに電食が発生するメカニズム
電食は、より正式には「異種金属接触腐食」や「ガルバニック腐食」と呼ばれます。この現象は、まるでフランジ部分に小さな電池が形成されるようなもので、以下の3つの条件が揃うと発生します。
- 条件1:電位差のある異なる金属の接触
金属には「イオン化傾向」という性質があり、種類によって電気的な電位が異なります。例えば、炭素鋼(鉄)とステンレス鋼、アルミニウムとステンレス鋼など、電位差の大きい金属同士が接触すると、電気が流れやすくなります。 - 条件2:電解質溶液の存在
金属間に介在する水、海水、結露、湿気などが電解質となり、電気の通り道(回路)を作ります。 - 条件3:金属間の電気的な導通
フランジ同士、あるいはボルト・ナットを介して金属が直接触れ合っている状態。
これらの条件が揃うと、イオン化傾向が大きく電位が低い方の金属(例:鉄)が「アノード(陽極)」となり、電子を失ってイオン化し、ボロボロに腐食(溶解)していきます。一方、電位が高い方の金属(例:ステンレス鋼)は「カソード(陰極)」となり、腐食から保護されます。
電食を防止する最も確実な対策は「絶縁」
電食を防ぐ最も効果的で確実な方法は、前述の3つの条件のうち「条件3:金属間の電気的な導通」を遮断することです。具体的には、フランジとボルト・ナットの接触部分に電気を通さない絶縁材を挟み込み、電気回路を物理的に断ち切ります。
絶縁対策に不可欠な製品
完全な絶縁を実現するためには、「絶縁ガスケット」と「絶縁ボルトセット」を組み合わせて使用することが極めて重要です。
1. 絶縁ガスケット
フランジの接合面(シール面)の間に挟み込み、フランジ同士が直接接触するのを防ぎます。PTFE(四フッ化エチレン樹脂)やガラエポ(ガラスエポキシ樹脂)など、高い電気絶縁性とシール性を兼ね備えた材質が用いられます。
2. 絶縁ボルト・スリーブ・ワッシャー
絶縁ガスケットだけでは、締め付け用のボルトとナットを通じてフランジが電気的に繋がってしまいます。これを防ぐため、ボルトの周りに「絶縁スリーブ」を、ボルト・ナットとフランジの間に「絶縁ワッシャー」を装着し、ボルト・ナットを完全にフランジから絶縁します。



このように、絶縁ガスケットと絶縁ボルトセットを併用することで、初めてフランジ接合部全体の電気回路を遮断でき、電食を確実に防止できます。ダイコーでは、お客様の配管の仕様や使用条件に合わせて、最適な絶縁製品の組み合わせをご提案いたします。
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